イェール大卒の医師が明かす「脳疲労」の正体 日本人を苦しめる「べき思考」という現代病

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人間は、お金が欲しいと思っているものですが、実は、自分がお金をもらうよりも、他人にお金をあげたほうが幸福度が高いということが、科学的データで報告されています。

昨年、「世界幸福度調査」が発表されました。毎年、世界中の幸福度を測る統計を出しているものですが、報告によると、幸福度にいちばん強く影響したファクターは、職を失ったりお金を失ったりといったことよりも、財布を落としたときに、それを拾って届けてもらえるかどうかといったような、コミュニティーにおける信頼や親切心だったのです。

もともと日本人は、親切な人たちだということが国際的に知られています。ただ、都市化してくると、やはり人間どうしのつながりに、幸せの入ってくる部分がなくなってしまいがちです。

われわれのなかには本来、モンク思考的な道徳が備わっていると思います。性善説で人を尊重する、人に親切にする。そして、自分とは何者であり、自分は何をしたいのかを知っている。しかし、それが泥で見えなくなっているのです。

たったの5秒、脳を休める

みなさんは、猛スピードのジェット機で、レールの上を走っているようなものです。効率を意識して、つねに脳を酷使し、脳疲労を起こすモードが体に染みついている。そして、そんな状態に陥っていることに気づくことすらなく、生きているのだと思います。

そんなときは、すごく退屈でつまらないものだけど、目の前にあるものをただじっと見つめる時間を、たった5秒でも作ってみるとよいのです。人生はすべて逆説と言いますが、実はそのほうが人生の近道である場合があるのです。

現代は、社会の膿が出ている状態だと私は思っています。どこかにあるはずの人間の道徳が吹き飛ばされてしまっている。でも、われわれは、音楽、芸術、スポーツなどから、人はそれぞれ違っているということ、相手をリスペクトするということを知っているはずです。そのシンプルなメッセージを、今後も伝えていければと思っています。

(構成:泉美木蘭)

久賀谷 亮 医師、医学博士

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くがや あきら / Akira Kugaya

イェール大学医学部精神神経科卒業。米国神経精神医学会認定医。米国精神医学会会員。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだのち、イェール大学にて先端脳科学研究に携わる。その後、同大学で臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間に渡り従事。その他、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバーUCLA非常勤医などを経て、2010年にロサンゼルスにて「TransHopeMedical」を開業。著書に『世界のエリートがやっている 最高の休息法』『ロスの精神科医が教える 科学的に正しい 疲労回復 最強の教科書』『脳が老いない世界一シンプルな方法』がある。

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