毒舌?新常識?「日本脱出」のススメ

元アップル・松井博さんの「体験的子育て論」

――いま、マレーシアでの教育移住が脚光を浴びていますが、松井さんご自身も米国で2人のお子さんを育てています。外国で子どもを育てるということをどう考えられますか。

日本の教育からは、大きく2つのことが欠けているように思います。ひとつは自分のアタマで考える訓練、そしてもうひとつが論理的な文章を書く訓練です。例えば数学だったらとにかく方程式の暗記で、そもそもなぜその方程式になるのか、という部分がズッポリ抜けています。歴史なども暗記中心です。豊臣秀吉の功罪について議論し、論文にまとめさせる。そんな授業があってもいいはずです。

――論理的な文章を書く訓練とは?

日本では「夏休みの思い出」みたいな散文を書く練習は少しやらされる程度で、相手の説得に必要な論理的な文章を書いたり、プレゼンテーションを作ったりする機会が少なすぎるように感じます。マレーシアでもおそらくそうだと思うんですけど、米国では小学校からプレゼンをやらせます。だから、みな自分の考えを論理的に表現することに早いうちから慣れています。

日本語を維持するのは簡単ではない

――自分を主張を表現する練習が足りない?

そう言えると思います。日本人はむしろイメージを大事にしますよね。評価される文章も、ホワンとした風景画のような感じですよね。だから隙のない思考をしたり、理詰めの文章を書く訓練があまりなさないように思うんです。

――松井さんご自身、子どもの日本語の維持はどうされましたか。

日本語の維持、これは難しい。完璧なバイリンガルってやはりハードルが高いと思います。うちは男の子が2人いますが、幼稚園で来た下の子はやはり日本語が弱い。長男は幸い読書が好きだったので、そこそこ難しい日本語の本も読めるようになりました。でも、敬語に自信がなく、目上の人と話すと緊張するといいます。それに日本語が出来ても『空気を読む』などということは大変だと思いますから、日本企業で働くのは厳しいかもしれませんね。

――海外で子どもを育てると、日本人のアイデンティティが壊れてしまうという人もいます。

僕は変な日本人でいいじゃないか、って言ってます。何か言われたら、『僕アメリカで育ったんで』と。気にしなければいいんです。日本に暮らすにしても、最初に変なヤツというポジショニングを得てしまえば、けっこう楽なんですよ。僕自身、高校から米国に来たわけだけれど、就職するときには、逆カルチャーショックを自分に与えてやろうと思って、老舗の電機メーカーを選んだわけです。でも失敗でした。日本のカルチャーをもう体が受け付けず、胃潰瘍になったりと散々だったのです。いっそもっと、変なヤツに徹してしまえばよかったようにも思います。なまじみんなにあわせよう、馴染もうとしたのが裏目に出たように思います。

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