村上春樹を読み「仕事を忘れる時間」を持つ理由 「インテグリティ」を培う「学び直し」の勉強法

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社会人が学ぶときの代表的な手段が読書です。つねに学び直すためには、読書の習慣をつけることは必須でしょう。

コンサルタントがまさにそうなのですが、仕事によっては、若い人であっても、自分よりも20歳くらい年上の人ともまともな話ができなくてはなりません。読書によって知的雑談力のベースをつくっておくことが必要です。

そこで重要になるのが「何を読むか」ですが、私は自分と同じ意見の本や、自説を補強する本ばかりを読むよりも、自分とは異なる意見が書かれている本を読むべきだと考えます。もちろん反対の意見を目にするのはあまり愉快ではありませんが、不愉快な状況での頭の中の議論というのは、大きな学びになるものです。

私自身は、ビジネス書の類いや世の中で売れている本は、部屋に積み上がっているものの、あまり読まなくなりました。なぜならそこに書いてあるようなことはプロジェクトの中で実際に扱うことが多い。本を読まずともリアルな実例で学べるからです。もっと若いときは実務に携わる必要があったので、そういうものもよく読みましたが。

いろいろな本を読むけれど、そこに何かポリシーがあったほうがいい。たとえば自分なりにテーマを決めて、それを研究してみる。私のライフワークの1つは、村上春樹さんと大江健三郎さんの研究です。この2人の作家の作品は何回も読み返していますが、つねに新しい発見があります。

作品が発表された年代順にもう一度読む。小説だけでなくエッセイや対談も読む。村上春樹さんは海外小説の翻訳も数多く手がけていますから、その翻訳はもちろん、原著も読む。さらには村上春樹研究の本も読む。

大江健三郎さんは高校から大学のころにかけて熱中し、その後遠ざかっていましたが、最近また最初から読み始めています。こんなことをしていると、いくら時間があっても足りませんが、こんなふうに本を読むのは、過去を整理し、未来を考えるということにつながっていきます。

経営者の中には、塩野七生さんや司馬遼太郎さんを愛読書に挙げる人が多く、私はそれらも読みます。とくに塩野七生さんの本は西洋の歴史の勉強にもなります。やはりグローバル企業では、西洋の歴史やキリスト教の考え方を知らない限り、きっちりした仕事はできません。西洋を理解したいと思ったら、塩野七生さんがライフワークとしているギリシャやローマ、そしてキリスト教の世界を理解していないと、そこから発展する文化的背景が理解できない。欧米人のものの見方や発想を理解するためにも、教養としてこれらの本を読んでおくことをお勧めします。

仕事以外の趣味を持ったほうがいい

私が50歳になる前くらいに、セゾングループでパルコの副社長になった森川茂治さんと話をしていて、こんなことを言われたことがあります。「60歳ぐらいで一線を退いたあとに、何か趣味でもやろうと思ってやってもうまくいかないよ。50歳になったら1年に1つずつ、一生続けられる趣味にトライしたほうがいい」。

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