日本人が家庭環境による格差に目を背ける現実 データに基づかない教育政策への大いなる疑問
いつの時代も存在する日本の教育格差
貧困家庭で育った子どもは大人になっても貧困から抜けることができず、またその子どもも貧困に陥るという「負のループ」。近年、その存在が大きな社会問題であるとして、研究者らが警鐘を鳴らしてきた。厚生労働省が今年7月に公表した2019年の「国民生活基礎調査」によると、2018年時点の子どもの貧困率(17歳以下)は13.5%。約7人に1人が相対的貧困状態にある。
こうしたなか、松岡准教授は、「日本では、まだまだ『生まれ』による教育格差に目が向いていない」と指摘する。
――そもそも教育格差とは、どんな状況を指すのでしょうか。
「家庭の経済的、文化的、社会的な有利さ・不利さを示す社会経済的地位(Socioeconomic status、以下SES)や出身地域など、子ども本人が変えられない初期条件である『生まれ』によって学力や最終学歴など結果に差が存在することが、教育格差です。SESの重要な構成要素の1つは親の最終学歴。例えば、父親が大卒だと、その子どもも大卒になる傾向があります」
「親の大半が大卒の地域もあれば、そうでないところもあります。公立小学校であっても同級生との会話で、『夏休みは家族でハワイに行った』『うちはロンドン』といった会話が生まれる地域もあれば、『家でテレビゲームばっかりしていた』児童が珍しくない地域もあるわけです。
社会科の授業で諸外国について学んだり、基礎的な英語を学習したりする際も、SESによって経験や知識量に差があるわけで、同じカリキュラムであったとしても子どもたちの受け止めは同じにはならないでしょう」
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