日本人が家庭環境による格差に目を背ける現実 データに基づかない教育政策への大いなる疑問
「残念ながら、コロナ禍という未曽有の危機でも、これまでと同様に調査の軽視が見られました。一斉休校時に子どもたちがどのように時間を過ごしていたのか、各学校がどのような対応をしたのか、それらのエピソードは報じられています。けれども、1学年100万人を超える子どもたちの現状を理解するための調査は、明らかに足りません。
実際に、学校や児童・生徒を対象として、まっとうな調査を行った都道府県の教育委員会は、数えるほどしかありません。このように現状把握をなおざりにして、思いつきの対策を繰り返しても、戦後ずっと続いてきた『生まれ』による教育格差が突如縮小することはないでしょう」
いつの時代も「先行き不透明な変化の激しい時代」
――問題はずっと続いてきたし、現在も続いているわけですね。
「私たちの先輩方は何もしてこなかったわけではありません。いつの時代も、現場教員の献身的な努力と創意工夫があったはずです。学校教育の内外で意欲的な新しい取り組みも数多くあったでしょう。いつの時代も『先行き不透明な変化の激しい時代』と論じられ、『新しい世代』への期待も大いにありました。それでも『生まれ』による教育成果の差という傾向は、時代を超えて存続してきたわけです」
「少子高齢化が急速に進んでいますが、それでも1学年当たり100万人以上の子どもがいます。そのような規模の社会全体を変えたいのであれば、打ち上げ花火のような散発的スローガンやエピソードで刹那の美しさや高揚感に酔うのではなく、データを用いて社会全体の現実と徹底して向き合うべきではないでしょうか。そのうえで、国内各地で対策の効果を検証し、効果的な教育実践と政策の知見を積み上げることができれば、少しずつですが、子どもたち1人ひとりの可能性を最大化する方向に進むはずです」
取材:フロントラインプレス(Frontline Press)
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