「医師からの説明」でなぜ患者は不安になるのか 「死亡率10%の手術」と「生存率90%の手術」の差

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ただ患者が安心感・信頼感を得られるような説明や傾聴を行うのは医師の大切な役目のひとつですので、不安があれば納得するまで医師と話してみましょう。ささいな疑問だと思っても、気になったことは遠慮せず、医師に質問してみることが重要です。

そして、不安に思ったらまずはやみくもに検索せず、まずは自分の不安な気持ちと向き合いましょう。ひとりで抱え込まずに、家族や友人に相談するのも効果的です。

「生存率90%の手術」と「死亡率10%の手術」

さらに、自身の気持ちの捉えかたを変えてみるのもひとつの方法です。例えば「生存率90%の手術」と「死亡率10%の手術」があったとき、前者のほうが手術を前向きに受ける気持ちになりませんか? 実際はどちらも同じことを言っているにもかかわらず、このように表現方法を変えるだけで受け取り方がガラリと変わる現象をフレーミング効果といいます。

「まれに起こる副作用」であれば「ほとんど起こらない副作用である」と自分の中で言い換えることで、不安感が軽減されるのではないでしょうか。

また、インフォームドコンセントの中には、治療の内容や起こる可能性のある副作用を医師が淡々と読み上げ、実際の治療方針の決定は「自己決定権」として患者に丸投げするようなものが少なからず存在します。そしてその丸投げとなる選択肢も、医学的知識が必要なため、その場では完全に理解できず、結局、医師に言われるままの選択になりがちです。

ただでさえ病気に対して不安がある中で、複雑で医学的な知識に基づいて重要な決断を迫られるような状況はかなりのストレスです。私も以前に何度かインフォームドコンセントを受けた経験がありますが、ひととおり基本的な医学知識を教科書で学んだ医師という立場であっても、「専門的な部分は知識がないところもたくさんあるし、もう一度家に帰って詳しく勉強してから質問・返事をしたい」と思いました。

説明している医師にとっては何度も話している内容でも、患者にとっては初めて聞くようなことが多く、このギャップを埋めることも重要であると考えます。

結果的にどのような治療方法を選んだとしても、自身が選んだ選択なのだから大丈夫だ、と思えればきっと前向きな気持ちで病気に向き合えるはずです。

そのためにも、医師をはじめとした医療スタッフや、家族・友人とのコミュニケーションを通して少しでも不安な気持ちを解消し、納得したうえで治療を受けていただければと思います。

上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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