中国で2021年7月下旬から8月にかけて発生した新型コロナウイルスの局地的流行や記録的豪雨による洪水が、中国製造業の景況感に冷水を浴びせている。
9月1日に発表された2021年8月の財新中国製造業購買担当者指数(製造業PMI)は49.2と、前月(50.3)より1.1ポイント低下して好不況の判断の目安とされる50を割り込んだ。製造業PMIが「不況ゾーン」に落ち込んだのは、(中国国内で新型コロナの流行が落ち着き、景気の回復傾向が強まった)2020年5月以降で初めてだ。
製造業の8月の事業活動は供給側と需要側がそろってスローダウン。7月の調査で(需要側の)新規受注指数が縮小基調入りしたのに続き、8月は(供給側の)生産指数も2020年3月以降で初めて縮小基調に転じた。
外需の状況も厳しい。海外では新型コロナの感染拡大が止まらず、(各国の水際対策強化で)国際物流にも滞りが生じている影響などから、海外企業の引き合いが減少。8月の新規輸出受注指数は、拡大基調と縮小基調のボーダーラインを半年ぶりに割り込んだ。
感染拡大阻止と景気下支えを両立できるか
景況感の悪化を受け、製造業の8月の雇用指数は5カ月ぶりに低下した。とはいえ、雇用調整の度合いはまだ限定的だ。調査対象企業の一部からは、「受注の減少に対応し、自己都合退社した従業員の穴埋めを見合わせている」との声が寄せられた。
一方、6~7月は緩和傾向を見せていたインフレ圧力が、8月は再び強まった。原材料の仕入れ価格や物流費の値上がりを背景に、製造業の工場出荷価格指数は4カ月ぶりの上昇を記録。これは企業がコスト上昇を販売価格に転嫁していることを示唆するが、需要が弱含むなか、十分な値上げは難しいのが実態だ。
「7月下旬からの新型コロナの(比較的大規模な)局地的流行は、2020年4~6月期以降に中国経済が直面した最大級の困難だ。景気の下押し圧力がかかるなか、感染拡大を阻止すると同時に、雇用の維持、物資の安定供給、物価の安定などを確保するため、バランスのとれた政策アプローチが求められている」。財新グループのシンクタンクCEBMのシニアエコノミストを務める王喆氏は、そうコメントした。
(財新記者:範浅蝉)
※原文の配信は9月1日
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