日本高野連「クラファン」で財政難を抜け出せぬ訳 コロナ禍や異常気象で脆弱性が浮き彫りに

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ただしクラウドファンディングは「カンフル剤」のようなものだ。何度も通用する手段ではないし、経済的な問題を根本的に解決するものではない。

根本的には「高校野球」の財政を健全化する以外の選択肢はない。具体的には「試合の運営、高校の指導」などを行う「競技部門」と、興行を行う「事業部門」を分離し、事業部門はスポーツマネジメント会社などに業務委託するという手もある。

アメリカではNCAA(全米大学スポーツ協会)が、プロスポーツに匹敵する巨額の収益を上げている。弊害もあるようだが、マネタイズすることで選手や競技に強力な支援を行っている。

事業部門では、入場料収入、放映権、グッズ販売、ライセンス販売などを一括管理し、利益を最大化する。そして得られた収益を、全国の高校野球や中学以下の野球の振興に活用。できることなら地方高野連の事業部門も一括してマネジメントする。

高校野球の未来のためにも必要な「財政健全化」

残念なことに、スポーツ界には「癒着」「利権化」の問題が横たわる。ガラス張りの会計は当然として、マネジメント会社との契約は5年くらいでその都度、公募で委託会社を選定し直すべきだろう。第三者による監査も必要だ。

2018年、日本高野連、朝日新聞社、毎日新聞社は「高校野球200年構想」を発表した。「野球離れ」の中で、高校野球も野球の普及、振興に乗り出すという趣旨だった。3年間で一定の業績は残したが、財政難によってこの構想の未来にも暗雲がかかっている。

また2019年には「球数制限」議論が起こり、有識者会議の答申に基づいて「1週間500球以内」という規定が作られた。この規定は3年間の試行期間の後に正式に決定される。2022年はその3年目にあたる。

さらに言えば、日本高野連は、日本の高校野球以外ではほとんど使用されていない「高反発金属バット」を見直し、2020年には「1年以内に、金属バットのサイズなどの規格を見直す」としていた。この年3月に「反発性の低い金属バット」の製品試験を公開したが、その後の発表はない。

問題は山積しているのだ。高校野球の未来のためにも「財政健全化」は喫緊の課題だと思う。「高校野球は教育の一環」ではあるが、教育にも「経済の裏打ち」は絶対に必要なのだ。秋以降に本格的な議論が起こることを期待する。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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