日本高野連「クラファン」で財政難を抜け出せぬ訳 コロナ禍や異常気象で脆弱性が浮き彫りに

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その一方で、日本高野連は阪神甲子園球場に球場使用料を支払っていない。球場を所有する阪神電鉄は、物販収入などを得ているが、ここにもビジネスが介在していない。

これまで、高校野球の徹底したアマチュアリズムは、健全性の証しではあった。しかし、異常気象、パンデミックなど激しい状況変化が立て続けに起こる中では、日本高野連の経済的な脆弱性が大きな問題になってきた。

今夏の甲子園は、雨天延期が8月19日の時点ですでに7日にも及び、決勝戦は8月29日になっている。31日から阪神戦が始まることを考えるとぎりぎりのスケジュールだ。

阪神甲子園球場は、1924年、夏の甲子園の前身である「全国中等学校優勝野球大会」を開催するために、朝日新聞社(当時は大阪朝日新聞社)が、阪神電鉄に働きかけて建設された。つまり「高校野球を行うための球場」だ。本来ならば8月1カ月を借り切って、ゆとりある日程で開催すべきだろう。

しかし無料で球場を使用している手前、そこまでは要求できない。今回は、阪神タイガースの試合と高校野球の「同時開催」も検討されているが、阪神電鉄側の好意に委ねるしかないのが現状だ。

クラウドファンディングでのアピール方法に課題

高野連の財政が厳しいのは、中央だけではない。都道府県単位の高野連も財政難に苦しんでいる。地方の高野連も入場料収入に依拠しているが、大きな収益ではない。そのためにチケットの販売や場内整理は、各校の野球部員やマネージャーが駆り出されている状況だ。多くの地方高野連は自前の事務所を持たず、公立高校内に設置されている。

すでに昨年から、財政難となった地方高野連の中には、A-portでクラウドファンディングを実施しているところがある。2020年7月末締め切りで10、2021年7月末で8、8月末で3つの地方高野連がクラファンを実施している。しかし予算を達成した地方はない。

必ずしもそれが問題だということではないが、アピールの仕方などに改善の余地はあっただろう。堀江貴文氏がCAMPFIREで募集した独立リーグ新球団への支援は、予算300万円に対して119%の357万円を集めて7月31日に終了した。

一般的にクラウドファンディングは「前向きな目的」で「より具体的な使途」の提示があるものほど達成率が高いとされる。「お金がなくて困っている」では、人々の心はそれほど動かないのだ。

さらに著名人が紹介するほうが注目される。各地方には、甲子園で活躍した「地元のヒーロー」が必ずいる。高野連が声を掛けて、そういう有名野球人が「郷土の高校野球に支援を」と呼びかければ、反応は違っていたはずだ。どうせやるならば、クラファンサイトの選択も含めて、もう少し工夫すべきではなかったかと思う。

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