日本高野連「クラファン」で財政難を抜け出せぬ訳 コロナ禍や異常気象で脆弱性が浮き彫りに

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しかし日本高野連の公式サイトで公表されている決算報告書を見ると、深刻な状況になっていることがわかる。

コロナ前の2019年度は、入場料収益は9.87億円、これは経常収益11.47億円の86%に当たる。しかし春夏の甲子園が開催できなかった2020年度は、入場料収益が0円となり、経常収益そのものが9635万円と12分の1にまで減っている。

日本高野連は1校20人(選手18人、責任教師1人、監督1人)を限度とし、春夏の甲子園参加者に旅費と滞在費を支給している。入場料収益がなければ、すべて日本高野連の持ち出しになる。

2021年度は、入場料収入として8.28億円の予算を組んでいた。収支予算書の説明によれば「選抜大会は、当年度は、1万9000席販売することを前提に、入場料金は値上げするものの入場者数が大幅に減少するため、前年度より5266万円減少。選手権大会は、当年度は、全席販売することを前提に、全席指定席化により再販売がなくなることや、 アルプス席数が減少していること等により、前年度より7647万円減少」とのことだった。

実際は選抜大会は1万人が上限となり、選手権大会は関係者を除いて無観客となった。入場料収益は、2020年のように0ではないにしても、2年連続で大幅に予算を割り込むのは確実だろう。

「商売気」がなかった高校野球

甲子園球場では夏は2017年まで、春は2019年まで外野席を無料にしていた。約2万席ある外野席には外野の入り口で止められることはなく、だれでも自由に出入りできた。日本で最も人気のあるスポーツイベントの1つが、無料で観戦できたのだ。平日などは、近隣に勤める会社員がスタンドに座って弁当を食べていたものだ。

最近になって全席で入場料を取るようになったが、高校野球は創設から1世紀以上、ずっと「商売気」がなかったのだ。

よく知られているように、春夏の甲子園では、日本高野連はNHK、民放から放映権料を受け取っていない。放送局は「野球振興」に協力して放送していることになっているからだ。ここまでの人気スポーツ事業であれば、収益構造は入場料と放映権の「2本足」であるべきだが、高野連は「1本足」なのだ。

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