ジョブズ「神のように世界を変えた男」のこだわり 1人1台の芸術的なコンピュータを作り上げた

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初代のNeXT製コンピュータは1990年、一般市場で9999ドルで発売された。1988年10月12日サンフランシスコの発表会にて、なんとなく最初は緊張していたような33歳のジョブズ(撮影:小平 尚典)
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ。2011年10月5日の逝去からこれまでを振り返れば、アップルが世に送り出した「iPhone」を軸に世の中はスマホによって、まさに激変した。
いまもなお語り継がれる伝説の経営者であるジョブズの知られざる姿を、若き頃から彼を撮り続けてきた写真家の小平尚典と、あの300万部を超えるベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』を著した片山恭一がタッグを組んで描いた連載が『あの日ジョブズは』として書籍化されました。その一部を抜粋、再構成してお届けします。

いま、なぜジョブズなのか?

ジョブズのプレゼンテーションはすでに伝説になっている。製品の売り上げ総額をプレゼンの時間で割った数字から「3分間で100億円を生む」とも言われた。1998年のiMac、2001年のiPod、2007年のiPhone、2010年のiPadと、いずれも見事なパフォーマンスを披露している。

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ジョブズの一挙手一投足に聴衆は熱狂し、拍手と歓声が上がる。ステージの上でiPhoneを操作して見せるジョブズは、まるで奇跡を行うイエスのようだ。彼はいま福音を届けにきたのだ。iPhoneという物質的なかたちあるものとして。

たしかにジョブズのプレゼンには伝道や布教のイメージがある。とくにがんを患ってからの彼には、ぼくたちのよく知っているイエスのイメージが重なる。イエスが神と人間のあいだを取り持ったように、ジョブズはテクノロジーと人間のあいだを取り持った。どうやって? テクノロジーをパーソナルなものにすることによって。そんなことはかつて誰も考えなかった。IBMに象徴されるテクノロジーは政府や企業のもので、パーソナルとは対極的なものだった。それは巨大で醜いものだった。

このビッグ・ブラザーに齧りかけのりんごが戦いを挑む。ジョブズにとって「パーソナル」とは何よりも小型化を意味した。コンピュータを持ち運びできるものにする。アップルを立ち上げたときから、彼がそこまで考えていたかどうかはわからない。だが現に彼は持ち運びできるコンピュータを作ってしまった。

いまやほとんどの人は、自分の上着やズボンのポケットに入っているスマホをスーパー・コンピュータとは思っていないだろう。ではなんと思っているのか? なんとも思っていない。「何」と意識することさえないところまで、スマホからはテクノロジーの匂いが消えている。

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