不動産は特需消滅、災害1カ月で見えた熱海の苦境 コロナ禍の遠隔勤務で高まった人気に冷や水

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土石流災害があった現場。今なお復旧作業が続いている(東洋経済オンライン編集部撮影)
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地方創生の成功モデルとして注目され、観光地としても移住先としても人気を集めていた静岡県熱海市。その地に起こった7月3日の大規模な土石流は、131棟の家屋をのみ込み、死者23人の甚大な被害をもたらした。今も行方不明者4人の捜索が続いている。突如、熱海の街を襲った土砂災害はこれまで活況だった熱海の観光や不動産業界にどのような影響を与えたのか。東京と熱海で二拠点生活を送るライターの伯耆原良子氏が災害後の現状をリポートする。

コロナ禍で物件がハイペースで売れていた

平日は東京、週末は熱海――。そんな二拠点生活(デュアルライフ)に憧れて、熱海に筆者が中古マンションを購入したのは2019年5月のこと。その翌年に新型コロナの感染が拡大し、企業の多くはリモートワークを導入するようになった。

通勤に縛られなくなったことで、東京から地方に拠点を移す人が増加。中でも熱海は、海と山に囲まれた自然豊かな土地でありながら、都心からのアクセスも良く、二拠点居住や移住先として人気エリアとなった。

「熱海の物件の売れ行きはどう?」。筆者は、購入した物件を紹介してくれた不動産仲介会社のA氏に、今年に入って尋ねたことがある。すると、こんな答えが返ってきた。

「リモートワークが広がったことで昨年春から物件がハイペースで売れて、この1年で500軒以上取り扱っていた物件が半数近くにまで減りました。しかも分譲時の販売価格よりも高値で売れるマンションも続出していて、“熱海バブル”に沸いています。お宅ももし今、売却するとしたら、購入時より300万円以上高く売れるんじゃないでしょうか」

相模湾を望む、眺望のいいマンションが人気で、物件が出ると即座に売れるという(筆者撮影)

まったく売るつもりはなかったが、そう言われて悪い気はしなかった。周囲からも「コロナが来る前に熱海に家を買うなんて、先見の明がありますね」などと持ち上げられ、正直、のぼせていた部分もあったと思う。

2021年7月3日。あの日が来るまでは――。

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