不動産は特需消滅、災害1カ月で見えた熱海の苦境 コロナ禍の遠隔勤務で高まった人気に冷や水
コロナ禍で物件がハイペースで売れていた
平日は東京、週末は熱海――。そんな二拠点生活(デュアルライフ)に憧れて、熱海に筆者が中古マンションを購入したのは2019年5月のこと。その翌年に新型コロナの感染が拡大し、企業の多くはリモートワークを導入するようになった。
通勤に縛られなくなったことで、東京から地方に拠点を移す人が増加。中でも熱海は、海と山に囲まれた自然豊かな土地でありながら、都心からのアクセスも良く、二拠点居住や移住先として人気エリアとなった。
「熱海の物件の売れ行きはどう?」。筆者は、購入した物件を紹介してくれた不動産仲介会社のA氏に、今年に入って尋ねたことがある。すると、こんな答えが返ってきた。
「リモートワークが広がったことで昨年春から物件がハイペースで売れて、この1年で500軒以上取り扱っていた物件が半数近くにまで減りました。しかも分譲時の販売価格よりも高値で売れるマンションも続出していて、“熱海バブル”に沸いています。お宅ももし今、売却するとしたら、購入時より300万円以上高く売れるんじゃないでしょうか」
まったく売るつもりはなかったが、そう言われて悪い気はしなかった。周囲からも「コロナが来る前に熱海に家を買うなんて、先見の明がありますね」などと持ち上げられ、正直、のぼせていた部分もあったと思う。
2021年7月3日。あの日が来るまでは――。
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