不動産は特需消滅、災害1カ月で見えた熱海の苦境 コロナ禍の遠隔勤務で高まった人気に冷や水
海が近いこともあり、地震による津波は常日頃から警戒していた。だが、山の上から激しい土石流が流れ込んでくるとは思ってもみなかった。
伊豆山地域で発生した土石流は猛烈な勢いで坂道を下り、次々と民家を押し流していく……。ニュースで繰り返し流される映像に、かの東日本大震災の津波がリンクして、言い知れぬ恐怖を覚えた。
災害場所が自宅と離れていることはすぐにわかったが、現地はどれほどの惨状だろうと胸が締めつけられた。
「無事ですか」「自宅は大丈夫でしたか」。友人・知人からLINEやフェイスブックのメッセンジャーを介して30通もの安否確認メッセージが届いた。まるで熱海全域が濁流にのみ込まれたのではないかと錯覚するほど、映像のインパクトは大きかったようだ。
「報道さんの伝え方1つで、街は潰れますね」
そう話すのは、熱海市役所観光経済課の山田久貴さん。熱海の知名度アップに貢献してきたキーパーソンの1人だ。
「災害が起きたのは伊豆山の一部の地域なのですが、ニュースの衝撃的な映像を見て、『熱海の街全体が危険だ』と感じた人も多いと思います。いわば、そうした“風評被害”によって観光業を中心に地域の産業は大打撃を受けています」
物件購入の申し込みがほぼキャンセルに
実際、どんな影響があったのか。前出の不動産仲介会社A氏に災害発生後の物件の動きについて聞いてみた。
「これまでひっきりなしだった物件の問い合わせが、災害直後からパタッと止まりまして、物件購入の申し込みもほぼキャンセルになりました。売買契約がすでに成立し、手付金の支払いが済んでいるお客様でさえも、『手付金を無駄にしてもいいから購入をやめたい』とおっしゃる方が何人もいました。
手付金は購入価格の10%が基本なので、3000万のマンションだったら300万円になります。物件自体は災害場所からも離れていて問題ないですし、さすがに数百万もの手付金を放棄するのはもったいないと強く説得して、皆さんようやく購入の意思を固めたという状況です」
熱海は地形上、傾斜地に建てられた住宅が多いため、購入検討者は今回の災害を受け、さらなる土砂災害の危険性を感じたのも無理はないだろう。筆者も物件購入前に、「熱海市土砂災害ハザードマップ」で警戒区域に入っていないことを確認していたが、今一度入念にチェックしてしまった。
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