不動産は特需消滅、災害1カ月で見えた熱海の苦境 コロナ禍の遠隔勤務で高まった人気に冷や水

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「本来、熱海は災害に強い街なんです。地震学の専門家からもこの地域一帯は、岩盤層により地盤が頑強との評価を得ています。今回の災害時より雨量が多かったときでも、ここまで大きな土砂災害に発展したことはありません。開発行為による『盛り土』に大量の水が含まれたことが崩落の原因とされていますが、やはりそうとしか考えられないですね」(熱海市役所・山田さん)

災害から1カ月が過ぎた今、「少しずつ物件の問い合わせが戻ってきている」とA氏は言う。だが、災害が起こる前のような活況には至っていないようだ。

「物件のオーナー側も今、売却しても価格が下がる恐れがあるので、しばらく手放さず様子を見るのではないでしょうか」(A氏)。これまでハイペースで売れ続けていた熱海の不動産動向は鈍化傾向となっている。

売り上げが例年の3割に、観光業者の悲痛な叫び

より深刻な経済状態にあるのが、熱海の基幹産業ともいえる観光業界だ。熱海市内で長年、ホテルを経営するB氏はこう漏らす。

「昨年8~11月まではコロナ禍ではあったものの、Go Toトラベルキャンペーンのおかげで予約が増え、例年よりも売り上げが伸びていました。それが12月にGo Toが一時停止となり、今年1月からは例年の30%程度に落ち込みました。そこに土砂災害が起きてダブルパンチ……。7月にぽつぽつ入っていた予約も7月3日以降、ほぼキャンセルになり、8月もかなり厳しい状況です」

宿泊の予約キャンセルが相次いだ原因として、「さらなる土砂災害が起きるのでは?」といった恐怖心や、「いまだ行方不明者の捜索をしている中で観光に訪れるのは不謹慎」といった心理的要因が第一に挙げられる。

だが、それ以上に打撃を与えているのは熱海の観光の目玉といえる、8月の海上花火大会と、3大ビーチ(熱海サンビーチ・長浜海水浴場・網代温泉海水浴場)の海開きが中止になったことだ。

土砂災害の影響によって沖合から浜辺に流木やがれきが漂着する危険性があるとして、今夏は遊泳禁止に。花火大会も被災者への配慮とコロナの第5波の感染爆発により、8月いっぱいの開催が中止となった。

「土砂災害にコロナの感染再拡大と、不運にも同時期に重なってしまいました。ここ数年の熱海人気でコロナ禍でも細々と営業できていたホテルや旅館、飲食店、土産店も今回のダブルパンチで、いよいよ廃業するところも出てくるのではと思います。銀行からの借り入れができない場合、もう営業を続けることは困難です。よく『明けない夜はない』と言いますが、『いつ夜が明けるんだよ!』と叫びたくなります」(B氏)

本当は今すぐにでも観光客に来てほしいが、被災者やコロナの状況を思うと、積極的な呼び込みはできない。周りの同業者たちもその狭間で苦しんでいるという。

大量の土砂や倒壊した家屋で道路が寸断されていた、国道135号の逢初橋付近。通行止めとなっていたが、7月29日に解除された(筆者撮影)
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