不動産は特需消滅、災害1カ月で見えた熱海の苦境 コロナ禍の遠隔勤務で高まった人気に冷や水

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とはいえ、何もせずにただ手をこまねいているわけにはいかない。地元の観光従事者は今、自分たちにできることはないかと模索している。

そこで立ち上がった企画が現在、遊泳禁止となっているサンビーチの清掃活動だ。海中や海岸に流入したゴミを一掃することで、「訪れた観光客に少しでも安心してビーチを楽しんでもらいたい」と、熱海温泉ホテル旅館協同組合の青年部や熱海商工会議所の青年部が中心となって企画した。

発災からちょうど1カ月の8月3日に、「熱海サンビーチ・クリーン大作戦」と題して行われた清掃イベントには、青年部メンバーをはじめ、熱海市役所や観光協会の職員、熱海の市民ボランティアが集まった。

筆者もイベントに参加したが、想像以上に参加人数が多くて驚いた。主催者側も当初は「50~70人の参加を見込んでいた」そうだが、実際には120人ほどが参加。地元の人たちのサンビーチへの思い入れや、「なんとかして観光を盛り上げたい」という切実な思いをひしひしと感じた。

120人ほどの参加者が一斉にビーチを清掃。海中に滞留しているゴミは作業艇に乗ったメンバーが網で収集した(筆者撮影)

地元の事業者が一丸となって耐え抜くしかない

ビーチには小さな木片やプラスチックゴミなどが漂着しており、参加メンバーで汗だくになりながら2時間かけて作業。砂浜はだいぶ綺麗になった。海中のゴミは取り切れなかったため、遊泳はしばらく難しそうだが、「浜辺を歩くなどして、ビーチ気分は十分味わってもらえると思います」と、運営メンバーの男性が笑顔を見せた。

今回の清掃イベントに参加していたB氏はこう話す。

「今は本当に苦しい時期ですが、地元の事業者一丸となって耐え抜くしかありません。7月の4連休は思いのほか観光客が増え、熱海ファンの多さを感じました。災害やコロナの状況が落ち着けば、きっと多くの人が足を運んでくれると信じて、なんとか営業を続けます」

災害打撃も「熱海復活の仕掛け人」が悲観しない訳』に続きます
伯耆原 良子 ライター、コラムニスト

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ほうきばら りょうこ / Ryoko Hokibara

早稲田大学第一文学部卒業。人材ビジネス業界で企画営業を経験した後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)に。就職・キャリア系情報誌の編集記者として雑誌作りに携わり、2001年に独立。企業のトップやビジネスパーソン、芸能人、アスリートなど2000人以上の「仕事観・人生哲学」をインタビュー。働く人の悩みに寄り添いたいと産業カウンセラーやコーチングの資格も取得。両親の介護を終えた2019年より、東京・熱海で二拠点生活を開始。Twitterアカウントは@ryoko_monokaki

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