大阪王将が「街中華モデル」戦略で見いだす勝機 「地域特性」を取り入れたオリジナルメニュー

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大阪王将が属するイートアンドホールディングスの当第1四半期売り上げは74億2300万円前年比アップ。食品事業では巣ごもり需要を受けて冷凍食品の「大阪王将 羽根つき餃子」が前年に引き続き好評だった。そして外食事業ではコロナ禍の影響を受けながらも30億1600万円と黒字に転換している。

業績アップには街中華戦略も大いに関係しているようで、4月30日に東長崎にオープンした店舗では売り上げが当初目標値の2倍近くを記録しているそうだ。

大阪王将代表取締役社長の植月剛氏によると、2019年、大阪王将の創業50周年に原点回帰を図り、商品や店舗に創業当時の形を取り入れたという。

「これまでの出店戦略のメインは、繁華街を中心とした大型店舗。業績は順調であるものの、繁華街といっても国内にそうたくさんあるものではなく、また家賃も高い。頭打ちが見えてきていました。そこで創業50周年を機に、創業当時の地域密着型店舗へと方向転換を図りました」(植月氏)

旧型店舗の例としては渋谷、池袋、新宿などの駅前店舗が挙げられる。アルコール需要を狙い、看板も赤地に大きな白文字と派手な印象だった。これらは現在閉店しているという。

代わって考案された「街中華モデル」では、大阪王将らしさや本質的な価値の訴求を狙い、創業時と同じデザインに回帰。

客層や立地に合わせたオリジナルメニュー

ただ、コロナの影響を受け、機能や立地戦略については見直しを行っている。新しいモデルでは、利用者の帰着駅で食品スーパーなどに近い「日常買い回り動線」内にあるという立地戦略をとった。広さも20坪あるかないかの路面店で、いかにも“昔ながらの中華料理屋さん”のイメージだ。
商品では前述の通り、地元客の取り込みや街起こしを狙い、客層や立地、利用シーンに合わせた店舗ごとのオリジナルメニューを設ける。

グランドメニューの「弾む初恋オムライス」(765円)。もとは期間限定商品として発売されたが、販売数が目標値150%を超えるなど、非常に好評を博したため通年メニューに加えられたもの。ケチャップライスは中華風にこくも加えられており、他にない味わい。女性のほか、昔ながらの中華料理屋のオムライスが懐かしいと高齢者にも人気だそうだ(撮影:尾形文繁)

新型店への入れ替わりを早いペースで進めており、今年度は直営・FC合わせ20店舗をオープン予定だという。同社は354店舗(2021年5月末)のうちFCが9割と多いチェーンだが、これまでのところ、地域密着を強化した店舗はすべて直営店としてオープンしてきている。

店舗ごとにメニュー戦略を変えるため、その地域の詳細なマーケティングを行う必要があることがその理由だ。しかし将来的には「のれんチャイズ」と呼ばれる独立支援制度も活用し、FCにも街中華モデルを展開していく予定だという。

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