あの串カツ田中が放つ「とっておきの秘策」 2021年度は種まきの年、鍵を握る冷食と新業態
「大変だったが、われわれはこの1年を乗り切ることができた。(今後は)外食だけでなく内食と中食、そして海外を足して成長カーブをさらに伸ばしていく」。居酒屋チェーン串カツ田中ホールディングス(HD)の貫啓二社長は、1月中旬に開いた決算説明会で力強く語った。
新型コロナの影響が長引くなか、居酒屋業界にとっては厳しい経営環境が続く。感染者数の拡大や政府が発する時短要請の煽りを受け客数は大きく減少。さらに10都府県では、2度目の緊急事態宣言の3月までの延長が決まった。
とはいえ、業界内でもコロナ影響の度合いには濃淡がある。串カツ田中HDの2020年11月期の売上高は87億円(前期比13%減)、営業損益は4000万円の赤字(前の期は6億0500万円の黒字)。売り上げが半減するような企業も出ている中で健闘した数少ない企業だ。
「漬ける」ソースを「かける」にした効果
踏みとどまれた理由はいくつかある。コロナ禍でも売り上げが落ちにくかった住宅街や郊外の路面店に積極出店していたこと、法整備の2年も前から禁煙・分煙化に取り組み家族客を取り込めていたことなどだ。
2020年6月に行ったソースの提供方法の変更も業績に寄与した。串カツといえば、ステンレス製の容器内になみなみと注がれたソースに漬けて食べるのが一般的だった。それを席に置いてあるボトルからソースを「かける」方式へと切り替えた(希望者に限り、従来の漬ける方式での利用にも対応している)。
この変更は廃棄ロスの削減という効果を生んだ。元々同社では、顧客ごとにステンレス容器に入れたソースを提供し、顧客の食事後に残りをすべて廃棄していた。それがかける方式になってから、年換算で37万リットルもの大規模なロス削減につながった。
これまでの廃棄量の約7割を減らすことができ、金額にすると数千万円単位の原価削減効果となった。今後も、「業績や環境への影響を考慮すると、この提供方法を当面続ける方針」(坂本壽男取締役)という。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら