あの串カツ田中が放つ「とっておきの秘策」 2021年度は種まきの年、鍵を握る冷食と新業態

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販路開拓だけでなく、本業である外食事業でも新業態育成を進める。上場来、串カツ田中の単一ブランドで成長を続けてきたが、2020年2月には沖縄の飲食企業「みたのクリエイト」から、「鳥と卵の専門店 鳥玉」というブランドを譲り受けた。

鳥玉では、名前のとおり新鮮な卵や鶏を使用したメニューを展開しており、午前中にはたまごかけご飯、ランチやディナーでは親子丼やチキン南蛮、カフェタイムにはプリンやパンケーキなど、幅広いニーズに対応できるのが特徴だ。

串カツ田中HDが事業を譲受した新業態の「鳥玉」。ショッピングセンター内での出店を狙う(記者撮影)

串カツ田中HDの子会社であるセカンドアローが運営を行い、関東ではすでに横浜市と千葉県柏市の2店舗で展開している。ショッピングセンター内への出店をにらみ、従来の串カツ田中では攻められなかったエリアを埋めていく。コロナ禍でアルコールを提供する業態の苦戦が鮮明ななか、「非アルコール」のブランドである鳥玉は今後の串カツ田中HDの一翼を担う。

海外でのFC展開も見据える

国内直営店で収益性などを見極めた後には、海外でのFC展開も見据えている。「海外には『串カツ文化』がないため、串カツ田中ブランドでの積極的な海外展開はやはりハードルが高い。一方、鶏は世界的に普及した食材で宗教上の障壁もあまりないため、鳥玉であれば海外展開ができる」(坂本取締役)。

さらに足元では、鳥玉に次ぐ第3の業態を2020年12月から実験しているそうだ。業態は「関西の名物料理」だという。こちらも事業モデルが確立できた際にはPRを行っていく構えだ。

矢継ぎ早に新施策を打つ串カツ田中だが、目先の業績は安泰とまでは言い難い。2021年11月期は売上高112億円、営業利益2億8000万円と回復を見込むが、第1四半期(2020年12月~2021年2月)の既存店売上高が前年比60%で推移し、その後も回復に向かうと想定して、この数字が作られている。

緊急事態宣言への対応として、1月や2月は大半の直営店を休業している。少なくとも第1四半期の業績にその影響は出るだろう。感染者数の推移やワクチン接種の進捗次第では予断を許さない状況が続く。コロナ禍の最中に打つ串カツ田中のさまざまな施策は功を奏するか。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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