牛めし「松屋」とカレーのコラボ店が増殖する訳

ゼンショー、吉野家より高い「牛丼依存度」

「マイカリー食堂」を併設させる店舗が複合店の主流になりそうだ(記者撮影)

「松屋」の黄色い看板の隣に、見慣れない「マイカリー食堂」の看板――。牛丼チェーン「松屋」を運営する松屋フーズホールディングス(HD)が、1店舗に自社のブランドを2つ同居させる「複合店」戦略を進めている。

組み合わせはさまざまだ。牛めしの「松屋」にとんかつ業態の「松のや」を併設する店舗もあれば、「松のや」にそば業態の「松そば」がついている店舗もある。店舗の入り口は1つで、併設された業態のメニューも券売機等で注文できる。

2019年11月に東京都清瀬市から始まった複合店は、2020年12月に21店にまで増加。都内だけでなく大阪、静岡、沖縄などのエリアにも拡大している。今後増えていくのは、主力の「松屋」および「松のや」にカレー専門業態の「マイカリー食堂」を併設していくパターンだ。

売り上げに占める牛丼依存度は8割

松屋フーズが複合店戦略に力を入れるのには、中長期の成長を見据えた戦略が背景にある。具体的には新業態の育成だ。その進捗は「牛丼依存度」をライバル他社と比較することでみえてくる。

「すき家」「なか卯」を展開するゼンショーHDの場合、回転ずしの「はま寿司」、ファミレスの「ココス」「ビッグボーイ」など数十のブランドを持つ。小売事業などもあるため、すき家となか卯を合わせた「牛丼カテゴリー」の売り上げは2020年3月期で全社売り上げの約34.9%。多種多様なポートフォリオを組んでいることがわかる。

「吉野家」を展開する吉野家HDも、うどんの「はなまる」や寿司事業の「京樽」などを有している。「国内吉野家事業」が全社売り上げに占める割合は、アークミール売却前の2020年2月期で約51.7%だった。

一方、松屋フーズは、2020年3月末時点で、松屋が963店、松のやが199店あるのに対し、次に多いのが回転ずしの「すし松」(10店)や「マイカリー食堂」(7店)と、主力2業態以外の多店舗化が進んでいなかった。

実際、松屋直営店が全社売り上げの約79.6%を占めており、「牛丼依存度」が高い。松のや直営店の約14.7%を合わせると、売り上げのほとんどをこの2業態で稼いでいる(2020年3月期)。

このように松屋フーズでは、「新業態育成が近年の課題だった」(同社広報)。だが、一定の店舗数を持っていた「はなまる」などの業態をM&Aで取得した吉野家に対し、松屋フーズの新業態は基本的に自社でゼロから始めたものばかり。新ブランドの知名度向上で課題もあり、首都圏エリア以外には店舗展開ができていなかった。

この点、全国各地に存在し多くの人がすでに知っている「松屋」や「松のや」に併設する複合店戦略であれば、顧客認知やブランド力向上を図ることが容易になるわけだ。

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