牛めし「松屋」とカレーのコラボ店が増殖する訳 ゼンショー、吉野家より高い「牛丼依存度」

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先述したとおり、松屋フーズが今後増やしていくのは、松屋か松のやにマイカリー食堂を併設するタイプの複合店だ。松屋は昔からカレーに注力しているうえ、とんかつとカレーの相性もいい。

回転ずしの「すし松」も有力な相方候補だったが、高速レーン設置がネックとなった。松屋などとの相性もあまりよくない。松屋フーズの広報担当者も「松屋や松のやといった“兄貴分”に支えられながら、マイカリー食堂が第3の柱に育ってほしい」と期待を寄せる。

マイカリー食堂では欧風カレーなど本格的なカレーを提供する(記者撮影)

マイカリー食堂はカレー専門業態ということもあり、一食ずつスパイスの量や辛さを調節するうえ、揚げ物などのトッピングも多く本格的。松屋や松のやのメニューを提供しながらマイカリー食堂の複雑な工程をこなすのはオペレーション面でも不安が残りそうだ。

ただ、こうした懸念についても同社はすでに手を打っているという。複合店に従事する従業員向けの特別な研修プログラムを用意するほか、通常よりもメニュー数を絞るなどの対策を講じている。

複合店戦略は主力の松屋強化にもつながる。松屋のボトルネックであったのが、「女性客」だ。ここ数年、従来のカウンター形式の座席だけでなく落ちついて腰掛けられるテーブル席を増やしたり、女性向けの定食メニューを強化したりしたが、それでも男性客が約8割強を占めているという。

一方、既存のマイカリー食堂は女性客の占める割合が約半分と比較的高い。そのため、複合店にすることでマイカリー食堂をフックにして松屋のメニューに触れてもらうという“逆輸入”も狙っている。

郊外出店でコロナ影響の軽減効果も

さらに、ウィズコロナを見据えた立地戦略の弱点補完も目指せる。ライバルであるすき家に比べ、松屋の既存店売上高は対前年比で低調だ。

業績のよかった2020年3月期からの反動もあるが、郊外主体のすき家に対し松屋は都心立地が主。コロナ禍で繁華街を歩く人の数が減った影響が大きかった。

2業態の入る複合店は比較的大きな店舗面積を必要とする。そのため出店エリアは郊外や住宅街が主体になってくる。コロナ影響が比較的軽微であった郊外出店の強化という観点からも、複合店は重要な役割を担う。

出店ペースは業績次第としながらも、2020年12月時点で21店という店舗数を、2022年3月期末めどに50~60店(店舗改装含む)にまで拡大させる考えだ。中長期的には全国展開も視野に入れる。

とはいえ、業績は順風満帆とは言いがたい。コロナによる大打撃を受けた2020年4~9月の中間決算は、松屋フーズにおいて過去最大となる25億円の最終赤字を計上。コロナ収束という先が見えない中、複合店戦略で光明は差すか。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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