日本の対外情報発信の不足と経済論議の混迷

グローバルな視点と言語で発信することの意義

第2は、金融政策についても金融規制・監督についても、日本の対応が激しい批判に晒された時期である。1990年代半ば以降、2013年初めまでがこの時期に当たる。マクロ経済については、「失われた10年(20年)」が言われ、デフレが諸悪の根源とされた。金融政策面ではバブル崩壊後に大胆な金融緩和政策が採用されなかったことが、金融規制・監督面では政府の「問題先送り」が、政策の失敗として批判された。

第3は2013年初めからの、海外の投資家や学界を中心にアベノミクスやその下での「異次元金融緩和」に対する期待や興奮が高まった時期である。しかし、熱気はほどなく冷め、第4の局面が到来する。海外の学者やエコノミストが長年主張してきた政策が期待どおりの効果をもたらしていないことが誰の目にも明らかになったからである。同時に欧米諸国でも「低成長・低インフレ・低金利」が顕著になり、私自身は曖昧で好きな言葉ではないが、「日本化」が話題になることが増えた。興味深いのは、この頃になると海外の主流派マクロ経済学者やエコノミストの議論も変化したことである。

第3の局面までは日本の政策へ激しい批判が

日本の物価が緩やかな下落に転じた1998年、ポール・クルーグマンはデフレ脱却のために「日本銀行が無責任な中央銀行であることを人々に確信させる」必要があると提言していた。

当時プリンストン大学教授のベン・バーナンキは、2000年1月のボストン連邦準備銀行のコンファレンスで「日本は自作自演の麻痺状態に陥っている」、「必要な行動を取るのを回避するため、些細な制度的、ないし技術的困難の陰に隠れている」と日本銀行を強く非難した。

激しい日本批判でも知られるフィナンシャル・タイムズ紙のマーティン・ウルフは2001年11月、日本経済について「もし正統的な政策が有効でなければ正しい対応は(中略)非伝統的なことを行うことである」と述べ、「成功する貨幣拡張」の必要性を主張した。

元FRB議長のアラン・ブラインダー(現プリンストン大学教授)は2005年8月、政策当局者や学者の集まるコンファレンスで、「2002~2003年のデフレの危険に対するグリーンスパンのこだわりを行き過ぎと見る人もいた。

しかし、ゼロ金利の罠にはまった日本銀行の轍を連邦準備制度は踏まないようにするという彼の決意は固かった」、「バブル崩壊後に中央銀行が大量に流動性を供給するという『後始末戦略』はかなりうまくいくように見える」と、自信に満ちた発言をしている。

米国の住宅価格は2006年から下落に転じたが、FRBのフレデリック・ミシュキン理事(現コロンビア大学教授)は2007年1月、「資産価格バブルの崩壊が金融システムの不安定性をもたらすことはほとんどない。住宅価格バブルの崩壊が金融システムの不安定性をもたらすことは、もっと考えにくい。

90年代に日本を含む多くの国で見られた金融システム不安は住宅価格ではなく、商業地価格の崩壊が不良債権問題をもたらしたことによる。多くの人は日本の経験を読み間違えている。問題はバブルの崩壊ではなく、その後の金融政策対応である」と、懸念を一蹴している。

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