日本の対外情報発信の不足と経済論議の混迷 グローバルな視点と言語で発信することの意義

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日本銀行総裁の退任後も講演や執筆等を通じて世界的に活躍している白川氏。真のグローバル化に必要なこととは(写真:J6HQL/PIXTA)
2018年に『中央銀行――セントラルバンカーの経験した39年』を刊行した白川方明氏が、このたび、その英語版とも言える『Tumultuous Times: Central Banking in an Era of Crisis』をYale University Pressから出版した。
日本銀行総裁の退任後も講演や執筆等を通じて世界的に活躍している白川氏が、グローバルな情報発信の重要性を語る。

日本経済や金融政策はどのように論じられてきたか?

「グローバル・スタンダード」は良きにつけ悪しきにつけ、現在の政策論議に大きな影響を与えている。そうである以上、日本もグローバル・スタンダードを創る場に能動的に参加し、自らの考えを反映させる努力をしなければならないと、私はかねがね考えてきた。

『中央銀行――セントラルバンカーの経験した39年』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

そう考えるひとつのきっかけは、日本経済や日本銀行の金融政策に関して海外でほぼ定説のような扱いを受けている議論に強い違和感を覚えていたことであり、さらに、日本経済の経験に学んだとされる「教訓」自体が、日本はもとより、その後の主要国の金融政策運営にも少なからぬ混乱を及ぼしていることであった。そうした状況を少しでも改善するには、日本の経験をグローバルな視点と言語で発信する必要があると思った。

バブル崩壊後の日本の経済や金融政策に関する海外の議論の変化を振り返ってみると、4つの局面に分けられる。第1は先行きへの楽観論が支配したバブル崩壊直後の時期である。日本国内での議論と同様、低成長の長期化はIMF等の国際機関やFRB等の中央銀行でも予測されていなかった。

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