対中強硬策、「南シナ海日米共同監視」浮上 "ジャパン・ハンドラー"が突き動かす安倍政権
アーミテージ・リポートはその後も続編が発表され、2012年8月には「アジアの安定を支える日米同盟」と題した第3次リポートが出されている。日本の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加や原発の再稼働をはじめ、日本の集団的自衛権の行使容認や自衛隊の海兵隊機能の強化等は、すべてこの第3次アーミテージ・リポートの中で求められ、現実はそれに沿った形で進んできている。しかし、同リポートで日本側に求められている、対イラン有事の際のホルムズ海峡への海上自衛隊の掃海艇派遣や、南シナ海での「航行の自由」を確立するための日米共同監視活動等はまだ実行されていない。
焦点は、南シナ海での日米共同監視
このため、年末までにとりまとめが予定されている日米ガイドラインでは、こうした南シナ海での日米共同監視が盛り込まれるのではないか、とみられる。14日の記者会見でも、アーミテージ氏は、日本の集団的自衛権の行使容認によって、シーレーン(海上交通路)の安全確保などで、日本がより大きな役割を果たせるとの期待を改めて示した。
日本側にもそうした日本の役割拡大が必至との見方が広がっている。森本敏前防衛相は25日未明に放送された「朝まで生テレビ!」の中で、「米国は日本の集団的自衛権の行使を歓迎しているが、これは実際にそうした(同行使の)蓋然性よりも、(日本は)この概念の下で米国の活動に対する支援を広範囲にいろいろな分野でできる」ことを指摘。その具体的な例として、「今までは周辺事態法での公海上における米艦船への輸送だけだったが、それ以外の支援活動もできる。つまり、平時、有事、緊急時をかねて、米国の活動に非常にグローバルに日本が支援活動、実際は後方支援活動ができるようになる」と述べた。
その上で、日本政府が、国の安全について現行法では十分対処できない可能性があるとして例示した15事例のうち、「侵略行為に対抗するための国際協力としての支援」の事例の重要性を森本氏は強調した。「侵略行為に対抗するための国際協力としての支援というのは、補給、輸送だけでなく、例えば哨戒活動、警戒監視、空中給油、早期警戒用の活動もそうだ。武力の行使に至らない米国に対する支援活動となる」と述べた。
また、新たな日米ガイドラインでは南シナ海を含むシーレーン防衛の重要性が強調され、P3C哨戒機等による南シナ海での日米共同監視が盛り込まれるのではないか、との見方について、民主党の長島昭久元防衛副大臣は29日、筆者の取材に対し、「民主党政権下で『動的防衛力』を構想した当初から、南シナ海に加え、第一列島線と第二列島線の間のTGT(東京・グアム・台北)トライアングルと呼ばれる広大な海域における日米共同警戒監視も視野に入れている」と述べ、その可能性を認めた。
それでは、南シナ海での日米共同監視活動について現場の自衛隊はどう思っているのか。河野克俊・海上幕僚長は29日の定例記者会見で、筆者の質問に対し、「それについてはまだ答える段階ではない」「まだ具体的にそのような話が出ているとは承知していない。ガイドラインの中にそれが盛り込まれるのかについては、まだ協議が始まっていないので何とも言えない」と述べた。
ただし、海上自衛隊が南シナ海での日米共同監視活動ができる能力を有しているかどうかについては、「能力的にはできると思う。常日頃、日米の連携はとっているので、それは可能だと思っている」と言い切った。安保政策見直しで政府が示した15事例の中では、こうした「民間船舶の国際共同護衛」も盛り込まれている。
南シナ海で海上自衛隊が米軍と共同で監視活動に踏み切るとなれば、同海上での実効支配の動きを強めている中国を大きくけん制するものとなる。そして、中国の強い反発は必至だ。アーミテージ氏やグリーン氏のように、米共和党寄りの勢力にとっては、望ましい施策になるかもしれないが、対中協調路線を模索するハト派のオバマ政権にとっては必ずしも歓迎されないかもしれない。しかし、現状は、安倍政権がオバマ政権の外にいるジャパン・ハンドラーたちの影響を大きく受けていることから、南シナ海での日米共同監視活動に向かう可能性は大いにある。
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