この6月、日本とアメリカ、それぞれのビルボードの総合チャート「HOT100」で、同じ曲が1位になったのを、ご存じの方はどれくらいいるだろう。――その曲とは、BTS(防弾少年団)の『Butter』。
1963年の坂本九『SUKIYAKI』(上を向いて歩こう)以来、アジア出身の非英語圏歌手として、昨年、57年ぶりにアメリカのビルボード1位となった『Dynamite』、「フィーチャリング」として参加した『Savage Love』(リミックス・バージョン)、そして『Life Goes On』に続いての1位である。
BTSのブレイクまでの経緯、メンバーの魅力、ダンスの実力などは、他でもよく語られていると思うので、今回は『Butter』の音楽そのものについて、特に、なぜ日本でこれだけ受けるのかを分析してみたいと思う。
なぜなら、若者から遠く離れた50代男性の音楽評論家(=私)が、『Butter』を一聴して、その音楽的特徴にとても驚き、完璧な虜(とりこ)になってしまったからだ。
既存のポップと比べてなぜ曲が短い?
「短っ!」――まず驚いたのは、曲が短いこと。
何とたった2分44秒(私の使っているApple Music上の秒数、以下同様)。例えば、ビートルズの『Nowhere Man』(ひとりぼっちのあいつ)や『I Should Have Known Better』(恋する二人)と同じ秒数。実は、昨年の『Dynamite』も3分19秒で、こちらもかなり短い。
昭和歌謡の時代に比べて、Jポップの曲は一様に長かった。5分台は当たり前で、6~7分台でも、いつのまにか驚かなくなっていった。
平成の特に前半、Jポップの普及メディアはCD。価格が同じ、盤のサイズも同じ中での比較においては、長い曲のほうが「得した感」があったものだ。また、CDと並んで、Jポップの重要メディアだったカラオケボックスで、大仰なバラード曲が映えたことも、長い曲を求める要因となった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら