それが、サブスク(リプション)に移行し、曲ごとの価格という概念がなくなり、「得した感」が問われなくなった。また、いちいちデッキにCDを入れて聴くのではなく、スマホで流しっぱなしにするライトな聴き方の中では、長すぎない曲のほうが、親和性が高いという側面もありそうだ。
また、作り手の側としても、サブスクにおいては、一定秒数(Apple Musicの場合30秒)より長く再生されると「1再生」とカウントされて、収入が入ってくる。今や、わざわざ長い曲にする理由に乏しい。
このような状況も計算に入れながら、2分44秒に曲をまとめあげたのだろう。少なくとも日本において、この曲の短さは、既存Jポップに対する有効な差別化ポイントになっている。
『Butter』のリズムからわかること
次にリズムの分析に移る。『Butter』の、ドラムスだけで始まるイントロに注目してほしい。「♪ドン・タン・ドン・タン」と、恐ろしくシンプルなリズムパターンになっている。
『Dynamite』もそうだったが、いわゆる「4つ打ち」と言われるリズムで、わかりやすく言うとディスコのリズムだ。シンプルさもあって、「レトロ・ディスコ」と称されることも多い。
イントロを聴いて、まず思い出したのが、マイケル・ジャクソンの超大ヒットアルバム『Thriller』収録、『Billie Jean』(1983年)の淡々としたドラムス・イントロである。
余談だが、『Butter』の歌い出しの歌詞は「♪Smooth like butter Like a criminal undercover」となっており、マイケル・ジャクソン『Smooth Criminal』(1988年)のタイトルが埋め込まれていて、一種のオマージュではないかと考えるのだが。
しかし『Butter』の場合、『Billie Jean』の「♪ツツ・タツ・ツツ・タツ」というドラムスよりも「8分音符感」が弱くて「4分音符感」が強く、より「もっちゃり」としている。
と考えると、『Billie Jean』よりも、1980年のクイーン『Another One Bites the Dust』(地獄へ道づれ)に近いと気づくのだ(『Butter』のinstrumental版を聴けば、ベースラインも含めた近似性がわかる)。
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