イノベーションは、事前に要件定義できない まず「シンプルな一歩」、そして「たゆまぬ改善」

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要約すると、イノベーションは、戦略的な課題への挑戦であり、現時点で見えていないものへの着手です。ソリューションは、明確になっている現状の課題に対して、システム化の要件定義を行うもので、効率化や改善が目的になります。

私が過去に携わった顧客企業を振り返ると、戦略的な課題であるにもかかわらず、それをソリューションとして実現しようとして、どうしても上手くいかない場合がありました。こうしたものは、何度やっても成功しないプロジェクトになりがちで、過去に、CRM(顧客管理システム)などの分野に多くみられました。外部のシステム開発者は要件定義できないものを、無理に要件定義しようとするため多くの時間とコストを費やし、複雑で高度なシステムを開発することになります。結果、誰も使わないシステムになってしまうのです。

まして、自社の販売戦略や商品戦略などは、まさに戦略でありイノベーションの領域。そこを外部に求めるというのは、愚の骨頂ではないでしょうか。私が経験した、成功したプロジェクトの多くは、ユーザー企業自身が基本的な設計を考えて、必要に応じて俊敏に改良を加えていったものです。

イノベーションを外部に頼んだら、終わり

とはいえ日本では、システムを開発するエンジニアはユーザー企業よりもIT企業に多くいます。こうした環境から、ユーザー企業が、戦略的な企画を作成する時に、外部のコンサルティング企業やIT企業に相談することが多いのです。しかし、それではなかなか成功を期待できるとは思えません。 コンサルタントや外部の企業に、事例紹介、市場分析やその他の情報を期待するのは正しいと思いますが、自分の会社のイノベーションを考えて提案してくれとまで言ったとしたら、質問と答えを両方持って来てくれという様なもので、その時点で、終わっていると思います。

では、イノベーションを起こすのに外部の力を期待できないとするならば、どうしたらいいのでしょうか。一つは人材の適性の問題、もう一つは、計画と組織の進め方そのものだと思います。次回は、HBS(ハーバードビジネススクール)のクレイトン・クリステンセン教授の講演内容などから、イノベーションのためのスキルや組織について紹介します。

宇陀 栄次 米セールスフォース・ドットコムEVP(上席副社長)

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うだ えいじ

1956年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、日本IBMに入社し、営業部長、社長補佐、製品事業部長、理事情報サービス産業事業部長、IBM AP Directorなどを歴任。2001年4月ソフトバンク・コマースの代表取締役社長を経て、2004年3月に米国セールスフォース・ドットコムの上級副社長に就任。同年4月よりセールスフォース・ドットコム日本法人の社長も兼務し、2014年4月より同社の取締役 相談役に就任。米国 salesforce.com Executive Vice President。

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