先日、内閣官房や総務省の方々から、中小企業のICT活用を促進するための施策に関して意見を求められた。セールスフォース・ドットコムが中小企業のお客様への販売活動を行っており、そうした事例が豊富にあるためだ。
その際、中小企業経営者の情報リテラシー(知識、能力)の問題、そもそも中小企業という言葉の定義が曖昧で非常に広範囲の企業規模を意味しておりわかりにくいことなど、さまざまな意見交換をした。
まず、情報リテラシーなんて、30年以上もIT産業に属している僕でさえも、果たしてあるのかどうか分からない。
ITという言葉の持つバリア
もっと踏みこんで、IT(情報テクノロジー) という言葉やICT(情報通信テクノロジー)という言葉を、少なくとも一般ユーザー向けには、あまり使わない方が良いのではないか、とも提案した。
自動車が自動車関連技術をドライバーに普及させようとしているだろうか。家電メーカーが、電子技術を家庭の主婦に紹介しているだろうか。技術の詳細については説明せず、それらを使ったライフスタイルや、ライフシーンを紹介するのが普通だろう。
スマートフォンやタブレットが急速に普及した際、情報技術(IT)を意識しない利用者が大多数だ。明らかに、アプリやライフスタイルや利用シーンを紹介し、それが、友達や知合いの口コミで広がったものだ。
企業でも同じこと。中小企業経営者の多くは、「IT」を意識する必要はない。情報を活用し、経営に必要な判断をすればいい。新しいお客様や新しいビジネスを実現するためのツールと説明すれば、多くの経営者は誰も反対しないだろう。それをパワーポイントの分厚い資料で説明するのではなく、ビデオや実際の画面で紹介し、お客様の事例や効果やメリットを利用者の言葉で語ってもらえばいい。
そういった活用事例を紹介し、ITという言葉を使わなければ、中小企業でもITの活用は広がっていくに違いない。そのことをわかりやすく説明する具体例として、牧場での活用事例をお見せした。
5000頭の乳牛、肉牛の妊娠、出産、搾乳などの年間計画を個体管理することで、計画的な経営ができるということだ。そもそも当社のサービスは、CRM(Customer Relationship Management) 顧客管理から、始まったものだが、この利用の場合はCow Relationship Management (牛の婚活支援)みたいなことになっている。この活用事例を紹介したところ、内閣官房の方から「面白いし、立派なプロセスイノベーションですね」と言われた。
ちなみに、最近のイノベーションをテーマにした本では、ITという言葉はほとんど使われていない。Wikipediaで検索すると、ITと言う言葉は、1954年にハーバード大学の教授が使ったようである。主には、スパコンのような物を意味している。米国で、AppleやGoogleやAmazonをIT企業とは呼ばない。
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