ITという「言葉のバリア」を取り払おう

第5回 技術の話ではなく活用法の話をするべき

先週、Zuoraという会社の創業者の訪問を受けた。2008年に起業し、米国で急成長し、ヨーロッパにも展開し、今後、アジア、日本への展開を検討。数年のうちに上場するだろうとのことだった。

同社は、クラウド型のBilling (請求管理)のサービスからスタートした会社である。顧客企業の請求管理を受託し、毎月のように利用料収入を得るモデルだ。この会社に限らず、これからは、あらゆるビジネスにおいて顧客との結びつきが重要になる。

音楽は、古くはレコード、CDを買っていたが、今は、インターネットを通じたダウンロードが主流。書籍も、最近では、ダウンロード型がひろまりつつある。これらに共通しているのは、加入者 (Subscriber) という形で、過去の購買履歴も分かるし、そこから、他の商品を推薦したり紹介したりできる点だ。

加入者モデルが重要なのはネットサービスだけではない。コンビニでも、高齢者の方々に、お弁当を宅配で提供しているサービスも出てきている。お弁当を売ると言うことは、単なる商品販売であるが、宅配することでサービスビジネスに変わる。加入者モデルになり、ついでに、色々な他の商品も注文を受け付けることができる。

あらゆる企業が、サービスビジネス化すると、その時に、Apple IDやYahoo IDやGoogleIDを、それぞれの企業が自社のIDを持つことになり、非常に効率的な請求の仕組みが必要になってくる。そこで登場するのがZuoraだ。同社の加入者管理サービスは既に、海外の大手企業1500社以上に採用されている。

Zuoraの創業者、ティエン・トゥオ氏は" Subscription Economy "という言葉を話したので、それは、米国では、一般的な言葉なのかと尋ねたら、数年前から、自分達が使い始めた用語だと言った。

加入者モデルをどのように取り組むかは、これからの企業にとって非常に重要な意味を持つと思う。

イノベーションを妨げるもの

ジェフリー・ムーア氏(右)と筆者

昨年、有名なアナリストで、作家でもある、ジェフリー・ムーア氏に会い、彼の講演を聞かせてもらった。彼の最近の著書は、EscapeVelocity という。直訳すると"脱出速度"だが、元々は、宇宙工学で、ロケットが重力に逆らって宇宙空間に脱出するための速度のことだそうだ。この本の日本語訳本のオビには、「イノベーションを阻む抵抗勢力に打ち勝つ戦略」、「中途半端なイノベーションをやめ、社内、経営陣、投資家にはびこる過去のしがらみから離脱し、メリハリのある資源配分の戦略」などと書いてある。

本人に直接会った時に、Speedと言わず、なぜVelocityと言うのかと、聞いたところ、Velocityには、方向性(ベクトル)が伴うものだと説明された。

日本人は、スピードという言葉が好きである。経営のスピード、営業活動のスピードを上げるなど。でも、方向性( 正確さ、品質)の方がより大切だという。ゴルフなら、300ヤード飛ばしてみてもOBとなってしまえば、罰を受ける。距離よりも方向性の方が重要だ。

ニュートンの運動第1法則(慣性の法則)には、「物体は外部から作用を受けなければその速度は一定である。動いているものは動き続け、静止しているものはいつまでも静止し続ける」とある。

企業経営の中にも、この法則が当てはまると言っている。既存の事業を守り、発展させることは非常に重要だが、一方で、新規事業を否定するエネルギーが働いてしまう。米国、西欧、日本に拠点を置く企業は、20世紀の成長市場では、ホームで戦う優位性があったが、21世紀の今後の人口増加13億人のうち、ほとんどは米国、西欧、日本以外だ。市場の成長も新興市場の時代である。日米欧の企業は、アウェイでの戦いになる。

このような時代を危機と捉えるか、チャンスと捉えるか。変化の時をチャンスと考えれば、今は千載一遇の成長の好機だと思う。環境の変化を観察し、成長分野を発見し、方向性の伴うスピードで、新しい事業に取り組む。実用最小限の製品やサービスを出し、顧客の意見を反映させながら、俊敏に対応する。21世紀のモデルに合わせた新しい成功を実現することが、日本企業の大きなチャレンジだと思う。

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