菅首相、不安だらけ「勝負の6月」を乗り切れるか 党首討論にG7、都議選と相次ぐ重大イベント

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しかし、開催まで残り6週間を切った段階では「菅首相が『安心安全な五輪開催』への具体的な根拠を説明し、各首脳の理解を得ることが不可欠」(同)となる。それがないまま、日本の決意を支持するとの首脳声明にとどまれば、「説明責任は果たせない菅首相の、首脳としての資質が問われる」(首相経験者)ことにもなりかねない。

その場合、コロナの感染状況と関わりなくIOCとともに五輪開催を決定しても、「開催時のアクシデントも含め、すべては日本の責任となってしまう」(同)。

さらに、6月25日には都民の民意を反映する東京都議会議員選挙が告示される。投開票日は7月4日で、告示前に政府が五輪開催を決めても選挙期間中に都内の感染がリバウンドすれば、「開催中止を掲げる野党が有利となる」(自民都連)ことも想定される。

「下りまん防」は感染抑止につながるか

これまでも「都議選結果は、その後の政局展開と密接に絡んできた」(自民長老)のは事実だ。五輪開催の決定を強行した結果、都議会での過半数回復を目指す自民、公明両党への打撃となれば、その時点で菅首相の自民党総裁としての責任も問われかねない。

6月1日からの宣言再延長を前に、政府与党内では宣言解除後も東京へのまん延防止等重点措置の実施を模索する動きが目立つ。感染リバウンドによる五輪開催中の四度目の宣言発令を回避する思惑からとみられる。

いわゆる「下りまん防」と俗称される対応だが、感染症専門家は「規制の内容はほぼ同じだが、宣言解除による都民の心の緩みの抑制にはつながらず、リバウンド回避には宣言再々延長しかない」と苦笑する。

菅首相は5月28日の会見で「これからの3週間は感染防止とワクチン接種という二正面作戦の成果を出すための極めて大事な期間」と力説した。しかし、「二正面作戦は兵力の分散につながるので、本来避けるべき戦術」(防衛省OB)というのが歴史上の教訓でもある。

分科会メンバーも「そもそも、リバウンドを恐れるのなら最初から五輪直前まで宣言を延長すべきで、ワクチン接種加速化との両にらみではあぶはち取らずになりかねない」と二正面作戦への危惧を隠さない。こうしてみると、菅首相が挑む勝負の6月は「関門だらけで、失敗すれば菅政権の命運にも直結する」(閣僚経験者)ことになる。

今、政界では、国内での五輪中止論を抑えるには「菅首相が感染拡大阻止による五輪開催に政治生命を賭けると明言するしか国民の心には響かない」(自民長老)との声が広がる。「まさに宰相としての覚悟が問われる1カ月」(同)となるのは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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