アートが社会の「分断」の壁を壊す為に必要な視点 「ねばならない」足かせを外し、人を動かす

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箭内:若手が大変だってことをアピールするのは必要なんだけど、それによって、「ほら、やっぱり芸術って食べられないじゃない」という空気が広がって、志望者が減ってくるってことは、藝大のためにはもちろん、未来の芸術のために大きな損害・損失になってしまいますよね。

国谷:藝⼤自身が、⾃分たちは必死で⼀⽣ 懸命リスクを冒してやっているってことを⾒せないと、お⾦は簡単には集まらないのではないでしょうか。

箭内:はい。自分から電話したことなんて一度もなかったのに、「初めて電話来たと思ったら金の話かよ(笑)」って言われました。「3000円からでも支援できるよ」って伝え回って。

人を動かす「広告の手法」

国谷:サポートが拡がっていくようにするためには、まだまだ試行錯誤が続きますね。

箭内さんは広告の世界に身を置いていらっしゃいます。広告は、人の行動や考え、ものの見方を変える力を持っています。私たちがこれから向き合う課題、例えば気候危機の問題、二酸化炭素を減らさないといけないとか、SDGsが目標にしている、もっと包摂的にならないといけない、格差をなくさないといけないなど、世界には課題が山積みです。

利己主義と利他主義ってありますよね。ちょっと青臭すぎて申し訳ないんですけど。

箭内:青臭くいきましょう。

国谷:人間は利己主義なことには割と乗ってくる。トランプ大統領にも多くの支持者がいて、利己主義的な空気が広がっています。

一方でグレタ・トゥーンベリさんのような若い人たちが出てきて、利他主義、未来の地球のことを考えて行動しないと間に合わないと主張しています。今、全ての人が影響を受け、特に弱い人が痛みを受けるコロナ禍の状況が起きているのに、やはり利己主義のほうが勝ちやすい。どうやったら利他主義的なことをアピールできて、人を動かせるのか。

私はテレビの仕事を辞めてから藝大に関わるのと同時にSDGsを積極的に啓発してもう4年になります。かなり認知は高まっていますけど行動まではなかなかつながらない。どうしたらいいんだろう、何をどう訴えていけばいいのか。

私は言葉の力を信じていますが、言葉も軽くなってきて、たくさん流行語はあるけれど、すぐ消えていく。どうやったら人にアピールできるのだろうかと、悩みながら歩んでいます。

箭内:本当にそうです。

国谷:箭内さんが作った広告のコピー「NO MUSIC, NO LIFE.」じゃないですけど「NO PLANET, NO LIFE.」ですから(笑)。

箭内:「多様であらねばならない」とか「分断を避けなければならない」とか、「ねばならない」という話って、頭では賛同できても、そうじゃない自分に気が付くだけなんですよね。

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