IT系起業家が買いまくる「アート投資」の超熱狂 値上がり見越して、マネーが大量に流れ込む

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前澤チルドレンと呼ばれる人たちの存在も(デザイン:杉山 未記)

「落札します。2600万円、2600万円、2600万円――」

競売人(オークショニア)が高らかにそう宣言し、ハンマーを振り下ろした。

1月末の土曜日、東京・代官山で現代アートのオークションが開催された。2600万円(落札価格は、オークション会社に支払う手数料を含めて2990万円)で落札されたのは、国内で人気を集める30代の現代アーティスト、ロッカクアヤコ氏の作品だ。オークション会社が事前につけた落札予想価格は1000万~1500万円であったのに対し、その約2倍の値を付けた。

若手国内アーティスト作品の高額落札が目立った

『週刊東洋経済』は2月15日発売号で「アートとお金」を特集。新型コロナによる緩和マネーの流入で活況を呈する現代アート市場に加え、アート投資の方法、コロナで苦境に立たされる美術館の経営などに迫っている。

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SBIグループが2012年から開催しているSBIアートオークションは、今国内で最も盛り上がっているオークションの1つ。今回の落札総額は約8.8億円と、コロナ禍にもかかわらず2019年秋に続いて過去2番目となる落札総額になった。落札額が落ち込むのが通常の冬のオークションの中では、異例の額だ。

オークションには、草間彌生、奈良美智、村上隆、バンクシーといった世界的に活躍する作家の作品も出品されていたが、事前の落札予想と比べて高額な落札が目立ったのが、ロッカクアヤコのような若手国内アーティストの作品である。

たとえば、井田幸昌の作品は、予想価格の上限700万円に対して約4倍の2760万円。KYNE(キネ)の作品は、同300万円に対して約3倍の920万円で落札されている。KYNEの場合、2017年に作品が販売されたときは約10万円であり、1次流通時から価格が100倍になったことになる。いずれも30代の作家だ。

(写真)2600万円(落札価格は2990万円)で落札されたロッカクアヤコ氏の作品(撮影:尾形文繁)

オークションの入札者も若い。会場には、ジーンズにスニーカーというカジュアルな出で立ちの30~40代の男女が目立った。SBIアートオークションの加賀美令マネージャーはこう語る。「これまではオークションで値がつかなかったような作家の作品も出品され、『儲かるかも』と思った人たちが参入してきた。回を重ねるごとに売買は活発になり、入札者の年齢層は下がっている印象」。

今、日本ではこうした若年層のアートコレクターが急激に拡大している。アートフェアを主催するアート・バーゼルとUBSの調査によれば、2019年の世界のアート市場は約7兆円で、アメリカ、中国、イギリスがその8割を占める。アート東京の調査によれば日本の市場規模は推計2580億円。世界市場の調査と基準が異なるため単純な比較はできないが、4%ほどと小さい。ただ、その推移を追っていくと2018年比で約5%増え、4年連続で拡大し続けている。

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