IT系起業家が買いまくる「アート投資」の超熱狂 値上がり見越して、マネーが大量に流れ込む

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あるギャラリーの代表は、「特定の国内作家を中心に『投資銘柄』がいくつかあり、売却益目当てにオークションなどで短期的な売買がされている」(あるギャラリー代表)。冒頭に上げたSBIオークションの活況にも、こうしたアート投資マネーが流れ混む。

一方、こうしたアートの投機的ともいえる売買には批判的な見方もある。会田誠や山口晃などの有名作家を輩出してきた現代アートのミヅマアートギャラリー代表、三潴末雄氏は「投機的なマーケットでは、どの作家の作品がどれくらい値上がりした、といったお値段の話ばかり。作品の持つ芸術的な価値や歴史的な意味合いなどは関係ない。だが、アートは色がついた株券ではない」と苦言を呈する。

活気づく周辺市場

国内のアート市場の盛り上がりを受けて、周辺ビジネスも活気づく。その1つが、寺田倉庫のアートのオンライン管理サービスだ。

日本のコレクターがアートを買い集める過程で直面するのが、アートの収蔵・管理の問題である。もともと米の保管業を営み、温度管理技術に自身のあった寺田倉庫は、1975年からアートの保管サービスに参入。現在は、個人コレクターやギャラリーなどのアート保管を担う、国内のニッチトップだ。

同社が2019年から開始したのが、アートを倉庫に預けてオンライン上で管理できるサービスだ。2月からは、数点から作品を預けたいという個人コレクターの需要を反映し、作品1点あたり月額500円から利用できるようになった。預けた美術品は、いつでも取り出しや公庫内での鑑賞ができる。さらに、昨年12月からは寺田倉庫を利用するコレクターの作品を展示するミュージアム、WHAT(ワット)をオープンした。

寺田倉庫が昨年12月にオープンしたWHAT。現在は、国内トップクラスの現代アートコレクター、高橋龍太郎氏や、奈良美智の匿名コレクターの作品展を行う(撮影: Keizo KIOKU)

2017年から美術品に特化した信託サービスを提供しているのが、SMBC信託銀行である。顧客から受託した美術品の保管を代行し、相続のときには顧客が指定した人物に美術品の所有権の移転させることも可能だ。

美術品信託を始めたきっかけは、「お客さまと接している中で、『株式を直系で承継できる方法があるなら、美術品もぜひ同じように対応してほしい』『承継のなかで一番困っているのは美術品。先祖代々のコレクションなので売るわけにはいかないが、メンテナンスなども心配だ』といった声を聞くようになった」(信託ソリューション部長の増原 宏樹氏)こと。これをきっかけに、ほかの資産に関する信託契約などにも広げていく狙いだ。

日本のアート市場は、黎明期を迎えたばかり。こうしたコレクター向けのサービスに加えて、相続や美術館に作品を寄附する際の税優遇の仕組みなども整えていく必要がある。日本から世界に名だたるアートコレクターは生まれるのだろうか。

『週刊東洋経済』2月20日号(2月15日発売)の特集は「アートとお金」です。
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印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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