IT系起業家が買いまくる「アート投資」の超熱狂 値上がり見越して、マネーが大量に流れ込む

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アメリカのアート情報誌・アートニュースが毎年発表する世界のトップコレクター200人の2020年版では、3人の日本人コレクターがランクインした。ストライプ・インターナショナルの元社長、石川康晴氏、元ZOZO社長の前澤友作氏、ファーストリテイリングの柳井正社長だ。

前澤氏は、2017年に人気現代アーティスト・バスキアの作品を約115億円で落札したことで知られるが、最近では北大路魯山人の器や、安土桃山時代の茶道具などを集めているといわれる。  

前出の山口社長は、「前澤さんは、ビジネスで成功した人のお金の使い道にアートを買うという選択肢があるということを若手の実業家に示した。間接的なものを含め、彼の影響を受けてアートを買い始めた人のことを『前澤チルドレン』と呼んでいる」と語る。

新興コレクターの中核を成すIT系起業家たち

新興コレクターの中核を成すのが、40代前後のIT系の起業家たちだ。起業家コミュニティの中には、アートの同好会がいくつか存在し、中には100人ほどの規模のものもある。その1つを主催しているのが、データコンサル系ベンチャー、ブレインパッドの草野隆史CEOだ。国内の若手作家を中心に100点弱の作品を所有する草野氏は、アートを買うメリットをこう語る。「ギャラリーで開催されるオープニングパーティなどで、様々な業界の感度が高い人とつながることができる」。自分でコレクションを形成することを楽しみながら、起業家のコレクターを増やすべく、勉強会やギャラリー巡りの回を開催する日々だ。

IT起業家・草野隆史氏が所有する作品、飯田美穂の『fb』(2019年)(写真:草野氏提供)

ネット転職サイトの幹部を務める竹内真氏は3年前からアートを買い始め、現在は300点弱の作品を所有する。IT経営者のコミュニティの中で、アートの買い方を教えてもらったという竹内氏。「コロナ前には、香港や米国のマイアミビーチなどで毎年開催される海外のアートイベントに参加し、そこでカジュアルな同好会を開いていた。集まってくるのは、アートを買えるような経済水準の人。彼らとフラットに交流できるのは貴重だ」(竹内氏)。

こうした「人脈作り」のメリットに加えて、現代アートの高い値上がり幅を利用した「アート投資」に熱心なコレクターもいる。まだ美術史上の価値が定まっていない作家が含まれる現代アート市場は、古美術や印象派などほかの美術品と比べて値上がり幅が高い。

アメリカのアートファンド、マスターワークス社が算出した過去25年の現代アートの年平均利回りは13%。S&P500を8.9%上回る。ここでいう利回りとは、作品の購入価格を、オークションなどでの売却価格で割ったものだ。欧米の富裕層の間では、総資産のうち5〜10%をアートで保有するのが一般的とされる。日本でも、アートを資産として買うという発想が一部の間では徐々に知られてきている。

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