お金を全く使わずオシャレを楽しむ「意外な方法」 フランス女性が教えてくれた「究極の一着」生活

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そしてさらに、事態は進化していく。

それからしばらくして、フランス第二の都市リヨンに民泊でアパートを借りて3週間ほど「プチ海外生活」に挑戦した時のこと。そこで私は実に驚くべきものを見たのであります。

現地のリヨネーゼたち、それはそれはオシャレであった。フランス女性がさりげなくベーシックなものを着ているのにこの上なくかっこいいというのはよく言われることだが、私が刮目したのはそこではない。

フランス女性の服は10着どころか毎日同じ

彼女たちなんと、来る日も来る日も全く同じ格好をしているではないか!

黒いスリムジーンズとセーターの上から、大きなフードのついたミリタリージャケットを無造作に羽織る。全員がほぼこのスタイル。つまりはですね、フランス人は10着しか服を持たないどころかほとんど1着しか持っていないみたいなんである。そしてこれが実にかっこいいのだ。

いやー私、唖然としたね。そしてちょっと考えて、なるほどそういうことかと納得した。

きっとこのスタイルは、足が長く腰が高い彼女たちの体型に「一番似合う」格好なのだ。

自分に本当に似合う服は決して多くないというのは、私もこれまでの苦闘から学んできたつもりだが、考えてみれば「一番似合う」服というのはもちろん1着しかない。なので、来る日も来る日もその一番似合う服を着るというのは、考えてみれば当たり前で実に合理的なことである。

だってどう考えたって、自信を持って自分に一番似合う服を着て出かける日って、気分がいいし、堂々としていられるし、迷いもない。だから彼女たちは輝いているのではなかろうか。背筋をしなやかに伸ばし、心に何の曇りもない力の抜けた自然な笑顔で、堂々と大股で歩く彼女たちの清々しさは、すべてこの「究極の1着」から出てくるのではなかろうか。

というわけで私の次の目標は、10着レベルの服を「1着レベル」に減らすこととなったのである。

正直なところを言えば、まだそこまで思い切ることのできない自分がいて、やっぱりパンツとスカートは両方いるよなあとか、日々同じ色を着るのもなあとかつい考えてしまうんだが、今の私には十分わかっている。

そんなことをうじうじ考えてしまうのは、私のオシャレ力が足りないからだ。自分に一番似合うスタイルをまだ見つけられていないからだ。

そしてそれは、考えているだけじゃきっと、いつまでたっても見つからないということも今の私は知っている。あれもこれもではなく、あれかこれかを選択し、選び抜き、減らしていくことで初めて、私は本当のフランス人レベルに達することができるのであろう。

というわけで、まずは今の服を「半減」つまり5着レベルに減らそうと、今まさに追試の真っ最中である。

究極の理想は……そうだな。夏は布一枚で過ごすっていうのはどうだろう。体にくるくる巻いて、ハイおしまい。洗濯も楽だし、サイズはいつだってぴったり。旅に出るのも風のように身軽。そんなことを考えていると、人生は実に自由で軽くて、本当に風になって空まで舞い上がっていきそうな気がするのであった。

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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