日本のワクチン接種が「異常に遅い」呆れた理由 この国に根付く「人間を不幸にするシステム」
この前、新聞を広げて驚いた。「ブータン、成人の9割(新型)コロナワクチン接種」の見出し。さすが「幸福度世界一」と言われる国だけのことはある。
そこで筆者の地元の市役所のウェブサイトを見ると、「85歳以上の方々の接種申し込みを(5月)7日から受け付けます」とある。
日本でワクチン接種を完了させた人の割合は0.8%で、インドの2.1%にも及ばない。昔、ある外国特派員が『人間を幸福にしない日本というシステム』という本を出し、当時外交官だった筆者はこの野郎と思ったが、やはりそれは本当だったのだ。
一体全体、どうしてこういうことになるのか……。政府は説明してくれない。そこで、断片的情報をこね合わせて、なぜこうなったか考えてみる。
「自前のワクチン」が製造できない理由
まず、「技術大国」の日本でなぜ自前のワクチンが製造できないのか。答えは、ワクチンの開発と製造は、その手間と費用の割には、厚生労働省の承認を取れなかったり、感染の流行がすぐ終わってしまったりと、リスクが大きすぎる。販売単価も大したものではないし、といったところだろう。
ならば、政府はなぜ外国製ワクチンをてきぱきと輸入できない? 政府の誰が、外国製薬企業の誰とどういう交渉をして、どんな契約を結んでいるのか、説明がない。
筆者は、新薬を日本に売り込む仕事をしているアメリカ人の話を聞いたことがある。日本では役人の力が強く審査過程が不透明、欧米に比べて不合理なほど長い時間がかかる、ということだった。
それがコロナ禍で、日本政府は外国企業にワクチンをお願いする立場に「落ちた」。それなのに厚生労働省は欧米企業の本社ではなく、話をしやすいその日本支社や代理人との交渉から始めた。