立憲民主・枝野氏「不信任案見送り」に広がる失望 衆院解散に怯える野党リーダーに覚悟はあるか

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野党でありながら、自民との連携姿勢が際立つ日本維新の会の存在も頭痛の種になっている。

8回の国会にわたって継続審議を繰り返してきた国民投票法改正案は11日の衆院本会議で可決、今国会での成立が事実上確定した。これは「国民の批判を恐れた立憲民主が妥協した結果」(自民国対)だが、維新の馬場伸幸幹事長は「立憲民主は必要ない政党」と罵倒した。

これに対し、枝野氏は10日、菅首相との質疑の中で感染爆発した大阪府を槍玉にあげ、「2回目の緊急事態宣言が解除された時、大阪府知事がいち早く解除を求めた。明らかな判断ミスだ。大阪府は朝令暮改で、一番悪いのは大阪府知事だ」などと攻撃した。

吉村洋文知事は維新の最高幹部でもあり、露骨な意趣返しなのは明らかだ。吉村知事は11日、「(大阪府の病床逼迫は)枝野議員の事実誤認」と強い口調で反論したが、こうした野党の足並みの乱れが、政権危機が叫ばれる菅政権の「最大の安定要因」(自民長老)となっている。

枝野氏は解散の「幻影」に怯えたのか

枝野氏の不信任案見送りの判断には、菅首相が都議会選挙との同日選を狙うことへの恐れもある。

しかし、参院での国民投票法改正案の審議日程も考えれば、不信任案退出を受けた解散断行は会期末の16日かその前日しか想定されていない。

選挙専門家は「会期末解散なら日程的に7月4日の都議選との同日選は無理で、投開票日は7月11日になる」と指摘する。その場合、首相指名が行われる特別国会は早くても20日以降となり、その後の組閣も五輪開幕の23日と重なる。

このため、野党が会期末に不信任案を提出した場合、「五輪が中止になっていない限り、政治的にも解散はできない」(閣僚経験者)のが実情だ。にもかかわらず、枝野氏が「解散誘発の恐れ」を持ち出したのは、「野党党首として解散の幻影に怯えただけの戦略ミス」(国民民主幹部)との批判も出る。

枝野氏は4月には「菅首相を退陣させて、私のもと、少数与党で危機と選挙の管理内閣をつくりたい」とも発言していた。10日の予算委での菅首相との論戦でも「私には危機に対応する知識と経験がある」とアピールした。野党内には「それだけの自負があるなら、なぜ堂々と不信任を出すと言えないのか」(国民民主幹部)との不信感が広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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