立憲民主・枝野氏「不信任案見送り」に広がる失望 衆院解散に怯える野党リーダーに覚悟はあるか

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そうした中、自民党幹部は「枝野氏は解散が怖いだけだ」と嘲笑する。

最新の世論調査でも自民党の支持率は微減にとどまり、立憲民主の政党支持率は依然として1桁パーセント台で低迷している。このため、政界では「調査を見る限り、次期衆院選で自民党が惨敗して政権が交代する可能性はほぼゼロに近い」(選挙アナリスト)との見方が支配的になっている。

政治的にみれば、政権奪取を目指す野党にとって、内閣不信任案は唯一最大の切り札だ。ただ、与党が圧倒的多数を占める国会では、出しても否決されるだけなのが実態だ。ここ数年の例をみても、国会会期末に野党が形式的に不信任案を出し、与党が否決して閉幕という「単なる通過儀礼」(閣僚経験者)となっている。

コロナ禍で野党は不信任案を出せない

コロナ感染が世界を震撼させた2020年は、野党が不信任案提出を見送った。今回も見送れば、「コロナなど非常事態の中では、野党は不信任案を出せない」ということが定着することになる。

もちろん、「解散は時の首相の専権事項」で、菅首相にとっても解散は政権運営の最大の切り札だ。しかし、今回のように、野党から不信任案を突き付けられれば解散するというのでは、「野党が解散権を持つような逆転の構図」(枝野氏)ともみえる。

今回の解散をめぐる菅首相と枝野氏の複雑な駆け引きの背景には、枝野氏を軸とする野党内の主導権争いや、次期衆院選をにらんだ選挙共闘での足並みの乱れがあるとの指摘も多い。本来、不信任案提出では最強硬派のはずの共産党があえて枝野氏に歩調を合わせたのも、主要野党の選挙共闘での共産党の微妙な立場を踏まえたものとみられている。

菅政権発足後、初の国政選挙として注目された「4.25トリプル選挙」は、野党の全勝に終わった。ただ、保守王国での野党での大逆転となった参院広島再選挙で、共産党は選挙共闘の枠組みから外れた。

参院長野補選でも、地元組織が結んだ立憲と共産の政策協定に国民民主や連合が猛反発。枝野氏が謝罪する事態を招いた。依然、共産党を含めた全面的選挙共闘は「実現不可能」(国民民主幹部)なのが実態だ。

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