事業所内託児施設を開設した老舗の菓子会社、子育てしやすい職場が企業の成長を支える
幼い子供を持つ母親が仕事をする時、頭を悩ませるのが託児の問題だ。働く女性が年々増えている一方で、公立や私立の託児所や保育園の数はその要望に対応できない現状にある。職場に託児施設があって、何かの時にすぐわが子の様子を知ることができたら…。女性が抱くそんな理想を、現実のものにしている企業が各地に現われ始めている。滋賀県に本社を置く「株式会社たねや」もその一つである。
1872年に創業、和洋菓子の製造販売を主力事業とし、滋賀を基盤に大阪、名古屋、東京などの大手百貨店に出店。近年では洋菓子に力を入れ、バームクーヘンの専門店を名古屋・東京・大阪などに展開、行列ができる店としても知られている。
同社で働く1600人余りの従業員のうち、女性が占める割合は70%とかなり高い。特に和洋菓子の製造販売に関しては、女性の労働力が主戦力となっている。
「現在は百貨店に出店し、新商品がブームになるなど時流に乗った展開をしていますが、つねにお菓子屋であり続けたいという気持ちを大切にしています。そのためには、心を込めてお菓子を作り、お客様と向き合って商品をお渡ししたい。そんなおもてなしができるのは、女性の力によるものが大きいと感じています」と、西田哲也常務は語る。
従業員が安全で快適に働く環境を整備するのは、企業としての責任でもある。女性が大多数を占めている中で、彼女たちが安心して仕事に専念できる仕組みを構築することは、企業の成長にとってもプラスになる。
そこで同社が採った方策は、事業所内託児施設を開設することだった。こうして2004年、本社と製造工場がある滋賀県愛知郡の敷地内に「おにぎり保育園」を開園した。その名は、母親が手塩にかけて作る“おにぎり”のように、人のぬくもりを感じられる場所であるようにとの願いを込めて、同社の社長である山本徳次氏が名付けた。
家庭的な雰囲気の中で親子を育てる
「おにぎり保育園」の概要は次のとおりだ。
園児はゼロ歳から5歳までの未就学児が対象で、定員は40人が基本の形態。現在は0歳児6人に対して保育士2人、1歳児10人に対して保育士2人、2歳児10人に対して保育士2人、3~5歳児20人に対して保育士2人が在籍する。