事業所内託児施設を開設した老舗の菓子会社、子育てしやすい職場が企業の成長を支える

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「当園では、家庭教育力を育てることを大きな目的としています。なぜならば、子育てに関する情報が錯綜する中で、一体どのように子供を育てればよいか悩む親が非常に多いからです。そこで子供が園で学んだことを、家庭に持ち帰って親に伝えることで、子供を通じて子育てを学んでもらえたらと考えています」。

園児の部屋は、担当の保育士が“自分の部屋ならどのようにデザインするか”を考えて、独自にしつらえるなど、より家庭的な雰囲気づくりに努めている。

また教育方針のもう一つの柱として、食育が挙げられる。
「食にかかわる企業として、同園の教育にも食育は欠かせない要素です。メインホールにオープンキッチンを設置したのはそのためです」(池本園長)。

園内には菜園があり、季節ごとに旬の野菜が栽培されている。育て方は地域の農家から教わり、世話は保育士と園児が行う。収穫した野菜は、園児が調理室へ運び、その日のおかずになる。生産から食事までの一連の流れを体験することで、食べることの大切さ、楽しさを自然に学ぶことができる仕組みが考えられている。

運営には情熱と投資も不可欠

おにぎり保育園の開設に当たっては、同社ならではの動機もあった。創業地である近江八幡市は、江戸時代、全国に進出した近江商人の故郷。そのことを誇りに思い、商人道として知られる“三方よし”の精神を経営理念に受け継ぎ、現代に継承している。ちなみに三方よしとは、「売り手より、買い手よし、世間よし」を実現するものであり、現代でいう“WIN−WIN”の経営理念だ。

「三方よしとは、商いにかかわるすべての人にとって利がなければなりません。もちろん働くわれわれもその輪の中にあります。おにぎり保育園の開設に対して、社内から“そこまでする必要はない”という声も上がりました。しかし、女性が働きやすい環境作りに役立つならという、オーナーの強い意思によって実現したものです」(西田常務)。

次世代の育成は、社会的な責務だとも考える山本社長。子育ては、地域や社会ぐるみで行うことが望ましいとも考えたうえでの決断だった。

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