「遺伝子で人生がほぼ決まる」と思う人の大誤解 人が生存できるようDNAは変化する環境に適応
仕事やその環境も同じだ。テレワークが一般化したため直接的な交流の機会が減り、家に閉じこもる時間が増えた人も珍しくない。その結果、「子どもの声がうるさくてイライラする」「孤独を感じる」など、“社会的動物”である多くの人間がストレスを感じることになる。
そしてストレスはうつを引き起こし、自殺者を増やすことにもなる。そればかりか、ストレスを原因とするドメスティック・バイオレンス(DV)も増えている。
わが国においても、新型コロナウイルスによる死者の大多数は、平均寿命に近い80代の高齢者だ。しかしその一方、自殺者は働き盛りの若い人が圧倒的に多い。ストレスが引き起こした自殺が、家族やその周囲、社会にもストレスを与え、さらに自殺者を増やしかねないという状況は、間違いなくあるということだ。
うつを発症するかどうかを左右するのはストレス感受性で、そこに遺伝子が影響するということだ。とはいえ、それだけでは決まらず、「どの遺伝子が細胞で使われるか」がポイントになる。
すなわち、遺伝子発現の「オンとオフ」をコントロールするエピジェネティクスが、ストレス感受性に大きな影響を及ぼすというのである。
無意識のうちに買ってしまう
新型コロナウイルスを例に挙げたりすると、決して人ごとではないことがわかるのではないだろうか。しかしその反面、ついおおごとのように考えてしまいたくもなるかもしれない。
だが実際には、エピジェネティクスはもっと身近なかかわりを持つもののようである。その一例として挙げられているのが、「スターバックスのラテ」に関するエピソードだ。
それからというもの、あなたは出勤するときにはいつでも、スターバックスでコーヒーを購入するようになった。
やがて、週末に外出した際にスターバックスを見つけても、買わずにはいられなくなるかもしれない。本来であれば、コーヒーを必要としなかったとしても。
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