「遺伝子で人生がほぼ決まる」と思う人の大誤解 人が生存できるようDNAは変化する環境に適応

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とはいえ、とくにDNAに詳しいわけでもない(むしろ苦手な)私のような人間は、エピジェネティクスといわれてもいまひとつピンとこない。そればかりは否定のしようがないし、「ああ、そうですか」と、自分には縁のない話のように感じてしまうのだ。

しかし、それは違うのだと生田氏は主張する。

私たちが日常的に経験するべきことの多くが、エピジェネティクスを引き起こす要因になっているというのである。

毎日、私たちは食べ物や飲み物を摂取する。そして家事をしたり学校や職場、あるいはスポーツクラブの水泳教室やヨガ教室に通う。そこには人が大勢いて、時には、人間関係に悩まされることになる。また、読書をしたり、音楽を聴いたり、映画を観たりする。こういった日常のごくありふれた出来事がエピジェネティクスを引き起こすのである。
このエピジェネティクスは、脳が経験に反応する仕方を変える。辛い経験をした個人が、立ち直るのか、それとも、依存、うつ、そのほかの心の病に苦しむのか、その基礎をつくるのがエピジェネティクスなのである。
(18ページより)

環境に順応するために変化する

「遺伝子をオンにしたりオフにしたりするスイッチ」というような表現を用いられると、かえってわかりにくくなると個人的には感じていた。だが、単純化すればそれは、「環境に順応するために変化する」ということなのだろう。

ところで環境の変化について考えるとすれば、避けて通れないのが新型コロナウイルスだ。2020年初頭に未知のウイルスが猛威を奮い始めて以来、私たちの生活は激変してしまったからである。

医療の現場は崩壊の危機に立たされ、人々は外出自粛の必要に迫られ、ソーシャル・ディスタンスを保つことは新たな常識にすらなった。その結果、観光・宿泊・外食などの業種は大きな打撃を受け、コンサート、スポーツイベント、映画に代表される催し物など、文化やエンターテインメントへの参加もままならなくなっている。

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