「遺伝子で人生がほぼ決まる」と思う人の大誤解 人が生存できるようDNAは変化する環境に適応
人生、能力、あるいは生き方や考え方などが、「遺伝子」の影響下にあると考える人は少なくないかもしれない。事実、インターネットを筆頭とするさまざまなメディアにおいては、遺伝子に関する多くのトピックスを見つけることができるだろう。
だが、薬学博士である『遺伝子のスイッチ: 何気ないその行動があなたの遺伝子の働きを変える』(東洋経済新報社)の著者、生田哲(いくた・さとし)氏は、それらは誤りであると断言している。
遺伝子は環境とかかわり初めて働く
なぜなら遺伝子は、環境とかかわることによって初めて働くものだから。
たとえば一卵性双生児は「まったく同じ双子」と認識されているが、正確には「まったく同じ」ではないのだという。
もちろん、まったく同じ卵子から生まれ、同じ女性の子宮の中で同じ時期に育った双子であることは事実だ。そういう意味では、ふたりの先天的な環境は同じであるといえるだろう。
しかし重要なのは、後天的な環境は同じではないという点だ。生田氏はこのことを、「一卵性双生児で生まれたひとりは学校の教師をし、充実した日々を送るが、もうひとりは薬物依存に苦しんでいる」という図式によって解説している。極端な話のようにも思えるが、しかし充分に考えられることでもある。すなわち、そのようなことも充分にありうるということだ。
たとえ同じ遺伝子をもっていても、同じ結果になるとは限らない。それどころか、同じ結果にはならないことが多い。遺伝子の働きは、食事や運動などの生活習慣やどんな書物を読むか、どんな人とつきあうかなどによって劇的に変わるからである。そして、最近の研究によって遺伝子の働きを変えるしくみ、すなわち、遺伝子を使う(オン)にしたり、遺伝子を使わない(オフ)にするスイッチが存在することが明らかになった。
このスイッチを研究するのが「エピジェネティクス」という、いま、爆発的に発展している学問分野であり、本書のテーマである。
(「はじめに」より)
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