「遺伝子で人生がほぼ決まる」と思う人の大誤解 人が生存できるようDNAは変化する環境に適応

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生田氏によれば、このスイッチのユニークなところは、環境の変化に応じてDNAの塩基配列を変える(変異)ことなく、遺伝子の使い方を変えることにあるのだそうだ。具体的には、このスイッチはDNAにタグをつけたり、タグを外したりすることによって遺伝子のオンとオフを迅速に切り替えるというのだ。

DNAにタグをつけたり、つけたタグをはずしたりすることによって、DNAの塩基配列を変化させることなく、遺伝子の働きを変えること、また、このことを研究する学問分野を「エピジェネティクス」と呼んでいる。遺伝子とは細胞がどのようなタンパク質をつくるかを指令する情報である。遺伝子が働いて、細胞がタンパク質をつくるとき遺伝子発現はオン、一方、遺伝子が働かず、タンパク質がつくれないとき、遺伝子発現はオフという。
(16〜17ページより)

人が生存を続けられるように、DNAは変化し続ける環境に適応しているということなのだ。

環境に順応する

だが、ここで疑問が生じるかもしれない。せっかく遺伝情報を担っているDNAがあるのに、どうしてわざわざDNAにタグをつけたり外したりする必要があるのかということだ。

この疑問について生田氏は、それは「人が生き残るために必要だからだ」と答えている。

環境は絶えず変化し続ける、これが常態である。人が生存を続けるには、この変化し続ける環境に適応できなければならない。
変化への対応で、まず考えられるのは、DNAの塩基配列を変化させる変異である。だが、変異を起こすのに数千年から数万年もの時間がかかるから、変異を待っていたのでは、環境の変化に対応できず、人は滅んでしまう。人が生き延びるには、変異よりはるかに迅速に遺伝子の使用法を変える手段が欠かせないのである。
(17ページより)

そこで、タグの活用が発明されたのであろうという推測である。生田氏によれば、タグをDNAにつけたり外したりするのにはさほどの時間は必要ないらしい。また、それによって遺伝子のオン/オフをコントロールできるなら、新しい環境に対する迅速な対応が可能になる。

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