なぜGPIF改革は、成長戦略ではないのか 株価が上がっても、日本経済の問題は解決しない

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この結果、東京などの一部の地区の一部の職業で賃金が大きく上昇し、それでも人が集まらず、供給制約により、店舗を休業させている居酒屋や牛丼チェーンが有名になっている。つまり、需要が足りず、経済成長できない、と言っているのは、短期的な問題であり、それは成長の問題ではなく、一時的な景気悪化に過ぎないのであって、成長の問題とは別である。

いわば、空腹に耐えられず飢餓の状態にあるときには、背が伸びるかどうかなどはどうでもよく、とにかく飢えをしのぐことが要求されるのだ。だから、黒田総裁は、「これまでは、日本経済の問題は需要の問題だと思われていた。今、需要超過となり、需要の問題はなくなった。しかし、それでも低成長の問題は残っている。やっと、日本経済の本当の問題は需要不足ではないことに皆が気づき、これを議論できる状況になった」。そういっているのだ。

日本経済の本当の問題とは?

しかし、問題は、これまで本当に日本経済は飢えていたのか、ということである。日本の問題は飢えではない。成熟化であり、成人病である。老化をどう防ぐか。若返りをはかるのか。あるいは成熟した壮年の魅力で勝負するのか。そういう問題なのだ。

もっとつまらなくいえば、日本および世界経済構造の変化に、日本企業など生産側(供給側)が対応できなくなった構造問題が日本経済の本質的な問題であった。地方にある付加価値創造能力を放置し、この劣化を放置し、東京にある現状でも一応動くものだけで勝負しようとして限界が生じていたのだ。

つまり、ケインズのいう大不況、一時的だが大規模な需要不足に陥ったのではなく、生産能力が、現在の需要に見合わないものになっていたり、生産機構自体が、現在の社会に合わないものとなっていたりして、古い機械に無理やり人間が合わせざるを得なくなっていたということなのだ。雇用の仕組みや企業での働き方、社会保障の仕組みも含めて古いメカニズムに、新しい社会に生きる人間たちが無理やり合わせてきて、企業も経済も力を発揮できず、また、力を落としてきたのだ。それが日本経済の問題である。

だから、ここに、需要という食料を流し込んでも、壮年の人間の身長が突然伸びるわけではない。質の充実により、身長は伸びないが、その仕事量を増やす、質的にも量的にもアウトプットを増やすように、性能を高める。成熟した頭脳をうまく使って、頭脳以外の部分を、成熟した頭脳の力が発揮できるようなものに変化させていくことが重要なのだ。

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