なぜGPIF改革は、成長戦略ではないのか 株価が上がっても、日本経済の問題は解決しない

✎ 1〜 ✎ 41 ✎ 42 ✎ 43 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その意味で、「スチュワードシップコード」(機関投資家の行動指針)導入は重要だが、政府に言われないとそれをやらない投資家が株主では、言われたから質が高まるとは思えず、効果は疑問だ。そして、金融そのものが、このような位置づけなのである。

「アイディアがあって、あとはカネさえつけばいいものが生み出せる」という企業や起業家があふれていれば、成長のボトルネックは金融ということになるが、日本はそうではない。逆であり、問題があるとすれば、そのような企業が不足しているということだ。

GPIF改革とは、運用改善の方法を考えること

そして、地方に眠っている、あるいは眠らされている、あるいは技術が定年や引退で失われているのを放置する、あるいはいまだにその技術に依存している企業の体制や経済社会の体制に問題があるのであり、金融を活性化し、投資家を活性化したところで経済は成長しない。

経済成長とは人を成長させることにより、経済も企業も成長することである。一方、GPIF問題とは、この「人を生み出す社会を支える年金財源確保」の問題であるから、成長戦略ではなく、どうやって運用収益を増やすか。それだけに集中すべきであり、日本の成長にも、日本の株価にも無関係に運用改善の方法を考えるべきであり、それだけがGPIF改革の戦略となるのだ。

その結果として、人々が知識と知恵を蓄積し、経済に貢献することによって、経済は成長していくのである。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事