アベノミクスの発動で、日本経済は「インフレ定着」という正常化の道筋を順調にたどっている。デフレから抜け出す中で経済活動が復調し、先月末発表された5月の完全失業率は3.5%と、16年ぶりの低い水準まで低下している。インフレという正常な経済環境に近づくにつれ、就労を希望する多くの人が職を得ることができるようになっている。
失業率の改善は、「想定内」の動き
従来からこのコラムで述べているが、アベノミクスの3本の矢のうち、しっかりと機能して、日本経済の状況改善をもたらしているのは、第一の矢である金融緩和策だけである。労働力や資本ストックなどの経済資源が無駄にならずに、十分使われるためには、消費、設備投資などの総需要が相応に増える必要がある。
総需要が減った場合、それを刺激する対応は、経済安定化政策と呼ばれる。そして、先進国においては、(財政政策ではなく)金融政策がその主たるツールになる。この金融政策が、日本では過去20年もきちんと景気刺激策として役割を果たしてこなかったので、総需要不足が恒常化しそれがデフレをもたらしてきた。
アベノミクス発動で、日本銀行が、米FRBなど他の中央銀行に見習う格好で、インフレ率に強くコミットし金融緩和を強化した。この「金融政策の大転換」で、約20年ぶりに総需要が本格的に拡大し始めた。日本経済がデフレから抜け出しつつあるのも、このためだ。こうした状況になれば、労働市場が完全雇用(就労を希望する人が職につける状況)に近づく過程で、失業率が改善するのは、政策効果として理論的にも予想された動きである。
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