人手不足の何が問題なのか? 人手が余る、デフレ時代のほうが異常だった

✎ 1〜 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 最新
拡大
縮小

しかも、実際に人手不足が深刻なのは、公共投資肥大化(第二の矢)の恩恵を受ける建設セクターや、低賃金の労働者を「酷使」してきた一部のサービス業くらいである。長期間デフレが続いてきた日本経済にとって、人手不足が成長の抑制要因になる局面は、まだかなり先のことだろう。

完全失業率は3.5%と、ようやくデフレが深刻化する1998年のレベルまで戻った。一方で、デフレ下では、若年男性サラリーマンの非正規が進んだたことで、現状は賃金水準が抑制されたままである。労働市場において、需給バランスがさらに改善する余地はまだ大きい。

最新の拙著「インフレ貧乏にならないための資産防衛術」(東洋経済新報社)で説明しているが、筆者は、デフレ長期化(日銀の失政が原因)に伴う若年層の労働環境悪化が、少子化を加速させた面が大きいと考えている。デフレが深刻になった1990年代後半に労働環境が劇的に悪化したのとほぼ同じタイミングで、合計特殊出生率が危機的な水準まで低下した。

アベノミクスの成功によるインフレ経済の実現は、労働市場の改善を通じて、少子化問題を和らげることにもつながるのである。

 

村上 尚己 エコノミスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT