人手不足の何が問題なのか? 人手が余る、デフレ時代のほうが異常だった

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ただ、失業率の低下という多くの日本人にとって望ましい経済現象は、アベノミクス(金融緩和政策の効果)を認めたくない識者にとっては、あまり愉快な出来事ではないようだ。失業率の低下が示す、労働市場における「需給ひっ迫」は、一部では人手不足という現象となって現れている。

人手が恒常的に余る、デフレのほうが異常

そして、批判精神が旺盛な識者は、今度は「人手不足が心配である」と、「論点すり替え」に必死なようだ。日本は、不幸なことにデフレという経済環境に慣れきってしまったためか、人手不足がさぞ大変なように伝えられるが、そもそも人手が恒常的に余っているというデフレ環境の方が、異常な状況であることをすっかり忘れてしまっているのだろう。

労働者の就労(新卒または転職)は、労働者にも企業にも、相応に「手間がかかるイベント」である。正常な経済状況の下では、企業経営者はビジネスの成功のため、取捨選択の手間をかけ、採用し、かつ経験を積ませた従業員の働きに見合った賃金を支払うのは当たり前だ。また、場合によっては、「働き以上」の賃金を支払うことだってありえる。経営者にとっては、戦力となっている従業員に対して、高めの賃金で報いて転職を引き止めることが、合理的な判断になるためだ。

ところが、日本では事実上の「デフレ容認」という、マクロ安定化政策の失敗によって経済環境が悪化し続け、人件費などのコストを一方的に抑制することをビジネスモデルとする企業が生き残り、マーケットシェアを拡大させてきた面がある。

デフレ下では、マクロ的に労働市場で人は幾らでも余っているのだから、人件費をできるだけ抑制することが経営者としての合理的な行動になる。そういう経済環境では、手間をかけた戦力である従業員を、高めの給料でよって引き止めたりしない。デフレそして人手余剰という経済環境で、賃金が下がり続け、従業員は使い捨てになる。だから、デフレが長期化した日本で、ブラック企業が社会問題になるのは当たり前なのである。

アベノミクス発動から1年が経過し、ようやくそうした異常な状況が解消しつつある。ただ正常な状況に近づいているだけなのに、人手不足が日本経済にとって極めて大きな問題であるかのように、一部の大手メディアは伝えている。

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