出井伸之「日本はアジアの真価をわかってない」

古希にして起業、83歳元ソニーCEOが語る未来

長田:アジアが世界最大の成長市場であることは誰も否定できません。その中でも平均消費性向が高い中国に、日本企業はかなりのめり込んでいます。サプライチェーンも含めて、抜き差しならない関係になっています。その一方で、コロナによる分断だけではなく、米中摩擦に象徴される政治面での対立が本格化してきました。政治とビジネスの関係が非常に複雑化し、舵取りが難しくなってきています。

出井:成長するマーケットにおいては、必ず大きな社会的変動を伴うわけです。戦争になることもありました。ただし、ビジネスは、政府の外交とは異なり、企業が外国とプライベートで付き合う活動です。そもそも、国がビジネスを国際的に見ることなどできません。それを実行する省庁などないじゃないですか。みんな縦割り行政で、縦の一部分を日本の中で見ているだけです。アジアは、世界のGDP(国内総生産)の50%以上を占めようとしているのに、全然目がいっていないようです。

中国は国家として、まだ、まとまっていないんですよ。今は、日本の第2次世界大戦時ぐらいのところにいます。国が伸びてくると、影響力をより一層強くしたがるものです。ですから、尖閣諸島、台湾をめぐってもめているのは、その象徴的現象です。このようなときに戦争が勃発するわけです。日本が近代化を進める中で何度か戦争をしてきたことは言うまでもありません。アメリカだって南北戦争に始まり、第2次世界大戦、キューバ危機、ベトナム戦争、湾岸戦争など、戦争と一発触発の危機を繰り返してきました。

今、中国もおそらく勉強している最中なのでしょう。このようなときだからこそ、何が何でも戦争をさせないように持っていかないといけない。その意味でも、米中問題を語るとき、アメリカの視点で中国を見てはいけないと思います。「米中は」とか「ファーウェイは」と騒いでみたところで、ファーウェイが優秀なのは事実なんですから。

東京一極集中はもう止めなければならない

長田:アジアに目を向けなくてはならない現実に直面しているのにもかかわらず、地方の若者は地元を離れたがらない。親も離したがらない。どんどん内向き志向になってきています。

出井:それは、学校、先生が内向きだからです。地方の人は、お役人から企業人に至るまで、何から何まで、いまだに東京を見ているでしょう。税金の分配などは、中央政府抜きにして語られない状況が続いています。東京一極集中はもう止めなくてはなりません。そう考えているからこそ僕は、10年前の東日本大震災の直後、新しい都市をつくるように提案しました。

(撮影:尾形 文繁)
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