外国人労働者にとって、日本でタクシードライバーとして働くことはハードルが高い。特定活動の就労ビザ緩和の影響を受け、全業種的に間口は確実に広がっている。それでもタクシーに限っては、2種免許取得、N1(日本語能力試験の最上位)、大卒相当の学歴とクリアしないといけない資格も多い。それゆえに日本で働く外国人ドライバーのほぼ100%が、就労制限のない在留資格保有者に限定されているのだ。
そんな中で総勢24カ国、60人以上の外国人ドライバーが在籍する(2021年2月末時点)のが東京・文京区に本社を置く日の丸交通だ。その顔ぶれを見ると、欧州、アフリカ、アジア、南米のあらゆる国の老若男女が揃う。
日の丸交通は大手4社「大日本帝国(大和自動車交通、日本交通、帝都自動車交通、国際自動車)」に次ぐ、準王手だ。外国人採用に注力したのが、東京五輪開催を控えた2017年のこと。実験的にスタートさせたプロジェクトだったが、これまで多くの外国人ドライバーを誕生させた。
外国人に頼らないと回らないフェーズが来る
日本人と比べると3カ月~半年間と長い研修期間が必要となるため、コストもかさみ、企業としてのうまみは少ない。それでも日の丸交通は「外国人採用を継続していく」と断言する。グローバル採用の担当者であり、企画者でもある大津一実氏はこう語る。
「2015年頃から女性ドライバーの採用に注力して、在籍100人を超えた。次に力を入れたのが外国人ドライバーの採用でした。2017年はわずか6人という在籍数でしたが、現在は100人規模を目指している。応募者は採用数の倍以上いますが、在留資格や日本語力の問題でなかなか採用に至らないケースも多い。
それでも、高齢化が進む乗務員、インバウンド需要増といった未来を考えると、必ず外国人の方に頼らないと回らないフェーズを迎える。今後は同じような企業は出てくるとみています。採用を始めてからクレームのようなものが来たこともないし、お客様の反応もおおむね良好です」
異国の地で奮闘するドライバーたちは、コロナ禍の今何を思い東京の街を走っているのだろうか――。彼らの言葉に耳を傾けた。
世界遺産のケニア・ナクル湖国立公園があるリフト・バレー州出身のトム・ワルインゲさん(48)が来日したのは、2000年にさかのぼる。プロボクサーを志し、名門・ヨネクラジム(現在は閉鎖)の門を叩いた。
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